ロボットの読経には心がないと言い放つ、お坊さん達の傲慢
今年もエンディング産業展が行われ、ほーりーが顧問を務める霊園会社アンカレッジも『お寺の樹木葬』で出展しました。
相変わらずの超盛大イベント。今年は去年のように台風も直撃せず、3日間で2万5000人以上が来場したとのことです。
そして我らがアンカレッジブースは初日にワールドビジネスサテライト(テレビ東京)で大きく取り上げられたこともあり、多くの方が足を運んで下さいました。
お越しくださった皆様。ありがとうございます。
で、それはそれとして。今回の出展で一番の話題をさらったペッパー導師。ロボットがお経を唱え、法要してくれる衝撃的なサービスです。
そもそもペッパーって何? という方のために簡単にまとめると、「ペッパーくん」はソフトバンクロボティクス株式会社が開発している人型ロボットです。AIを搭載し、感情認識機能を有して人間と会話できることで話題になりました。
で、そんなペッパーくんが僧侶になったということで、エンディング産業展前から話題騒然。そして実際に会場で実物を見たお坊さん達の間で、ネットも巻き込みながらいろんな意見が飛び交っていました。
ちなみにペッパー導師。アンカレッジブースのすぐ斜め前、5歩でたどり着く近さにいました。写真の奥に見える後ろ姿が分かりますでしょうか?
それにしても前に宇宙葬が一番話題だった時はそのブースのすぐ前でしたし、アンカレッジの伊藤社長の立地運は並外れていますね。
ペッパー導師を見たお坊さん達の感想
ということで地の利を生かしてほーりーは知り合いのお坊さんが見学に来るたびに、ペッパー導師の感想を聞いていました。だいたいは否定や嫌悪、あっても消極的な賛成意見が多かったですが、大別すると以下のような感じです。
○ロボットのお経で人の心は癒されないし、供養にもならない(侮蔑)
○今はまだ稚拙だけど、技術が進化したらどうなっていくだろう(不安)
○お坊さんの資格を持っていないのに、勝手に葬儀や法要なんてするな(怒り)
○自分には自分のできることをやるだけ(無視)
○これもまた時代の流れ(諦め)
またエンディング産業展でお坊さん達をいらっとさせた元祖と言えば、『美坊主コンテスト』。今年も開催されましたが、出場されたお坊さんに「ペッパー導師はありだと思いますか?」というストレートな質問も投げかけられていました。
これに対して優勝された真言宗功徳院の松本勇真さんは、周りにアンケートを取ったら4割くらいの方はありと答えたとお話されていました。調査対象は分かりませんが、意外とポジティブな数字です。
ちなみにご本人は複雑な想いものぞかせながら、コラボしてみたいとおっしゃられていましたよ。
ほーりーもペッパー導師を見てきました~
そしてもちろん、ほーりーもペッパー導師を見てきました。というか、もう法要が始まる度に入り浸り(?)です。10回くらい見ていると、だんだん概要が見えてきました。
ペッパー導師は自分で木魚を叩きながら、般若心経を読経します。説明資料を読むと各宗派に合わせて、様々なお経が唱えられるようです。
で、まあお坊さん達が散々に酷評したくなる気持ちも分かります。
「ぶっ↑ せつ↑ まー↑ かー↑ はん↑ にゃー↑ はー↑ らー↑ みー↑ たー↓ しん↓ ぎょー↓」
と、いう感じ(って、伝わるかな?)で、かなり面白い抑揚です。
また説法もしてくれますが、これはテキスト原稿を読み上げているだけなのかな? 「どういう風(ふう)」という部分を、「どういうかぜ」と話していました。聴衆に合わせて法話の内容を変えたりと言ったAIを使ったペッパー君らしさは、残念ながら展示会場では見えていません。
失礼ながらまだまだこれはおもちゃとほーりー自身も感じましたが、それでも一方でものすごく可能性にあふれた存在だとも考えています。
ロボットの読経には心がないと言い放つ、お坊さん達の傲慢
話は変わりますが日本を代表するロボットと言えば、鉄腕アトムやドラえもんではないでしょうか? が、この両者は本質的にはロボットではなく絵です。
そしてどちらもこれまで多くの人に希望をともしたり、心を癒したりしてきました。私はペッパー導師には心がないからお葬式はできないという言葉は、極論すればアトムやドラえもんはただの絵だから人の心をつかむことはないと言っているのと同じだと思っています。
特に仏教的な思想ではないかもしれませんが、日本では物にも魂が宿るという考えは伝統的に受け継がれています。
また、ペッパー導師には心がないと言っているお坊さんからは、「心ある葬儀は自分たちにしかできない」という自負心と裏表の傲慢さが見え隠れします。そして結果としてペッパー導師を受け入れるのは、「故人になんの想いも持たない、ただ安く手軽に済ませたい人だけ」という結論が導き出されているように感じます。
が、私は心という面でもペッパー導師がお坊さんを凌駕する可能性を考えています。もう少し正確に言えば「ペッパー導師」が広まるかは一企業の事業戦略や世界的な技術革新、市場動向のタイミングもあるので予測はできません。しかし「ロボットが心の面でお坊さんより求められる」という意味では、近い将来かなりの確率で実現されていくと思うのです。
その根拠となるのは、介護ロボット市場の拡大です。これからの日本は超高齢化社会を迎えます。そして現在でさえ、介護は低賃金で人材の定着がおぼつかない業界です。
そこで各社盛んに開発競争を繰り広げているのが、介護の補助をしてくれるロボットです。これはお坊さんの代わりにお経を唱えるなんていうニッチな市場と異なり、とてつもない社会的意義があります。
そしてもしも今後こうした介護ロボットが普及し、10年間介護を受けた末に亡くなられた方が、自分を介護してくれたロボットにお坊さんソフトをダウンロードして葬儀をしてほしいという遺言を残したらどのようになるでしょうか?
亡くなってから駆けつけてきた人間のお坊さんと、心がないとはいえ10年も身近に寄り添い、人生最後のパートナーにもなっていたロボット。心情的にどちらにお経を唱えてほしいかと言われたら、後者を選ぶ方も私は少なくないと思います。
ということで、、、
先日、毎日新聞に面白い記事が載っていました。「ネットで愛の告白 女子中学生は成人の5倍OK」というものです。
調査では、メールや無料通信アプリでの告白が「OK」「相手によってOK」と回答した中学生は計59.0%で成人の50.6%を10ポイント近く上回った。女性に限ると、「OK」と答えた中学生は22.9%だったのに対し成人は4.5%。「相手によってOK」を含めると中学生は60.0%、成人は40.3%だった。
寺社コンを開催している身としては成人の男性・女性による「OK率」の違いの方が気になりますが、そこはちょっとおいといて。
デジタルネイティブと呼ばれる世代と私たちでは、告白でさえもこんなに感性が異なります。お寺なんて全く縁もゆかりもない人が、お坊さんとロボットであればどちらを選ぶかという命題も、将来的には発生するわけです。
なので私はペッパー導師を目新しさだけで否定するのではなく、受け入れてお寺でどう活用するかを考えていくことが大事と思っています。
人工知能やロボットは、どんなに「いやだ」と言ってもこれからどんどん発達していきます。積極的に付き合うことでしか、切り開けない未来もあるのです。