単身世帯の増加で、これから檀家さんの女性比率が高まっていく
先日、浄土真宗本願寺派の岐阜別院さんで講演させて頂きました。こちらは岐阜教区寺族女性会連盟さんが主催したもので、参加された方はほとんどが女性です。
そんなわけで今回のタイトルは『寺族女性の5つのアクション』とさせて頂きました。以前に行った『お寺の奥さんの5つのアクション』をアレンジしたものですが、主催者側の話でお寺の奥さん以外の方もいらっしゃるとのことなので、そちらにも配慮した形です。
そして今回、ほーりーが最も伝えたかったことは、これからお寺と女性の付き合い方が変わっていくだろうという予測です。具体的には檀家さん・門徒さんの総代会や信徒さんの集まり、お葬式の喪主、お墓を購入する契約者など、女性比率が少しずつ上がっていくと考えています。
端的に言えば、男性色の強かったお寺社会は崩れていくということですね。そしてその分、寺族女性はこれまでと別観点でも鍵となります。
そこでこうした未来予測の根拠となるデータをまとめたので、このブログでも紹介します。
単身世帯は年々増加している
まず大前提ですが、日本における単身世帯(一人暮らし)は年々増加しています。この要因は大きく分けると、以下の2つがあります。
(1)未婚率の上昇
(2)配偶者との死別に伴う高齢単身者の増加
(1)は比較的若い方に影響し、(2)は年配層に作用しました。その他に離婚率の上昇もありますが、こちらは2000年代前半をピークにやや下降しています。
この傾向は男女ともに共通していますが今回は女性がテーマということで、国勢調査で発表された年代別の女性単身者数をグラフ化してみました。
注目すべき変化はピンクの矢印で示しましたが、45~54歳(赤線)と75~84歳(緑線)の単身世帯は他世代より大きく増加しています。このふたつの事象をもう少し分かりやすくグラフで表すと、以下になります。こちらは各年代の単身世帯増加率を表したものですが、15年間で45~54歳が180%超、75~84歳は150%近く増加していることが読み取れます。
2020年の45~54歳は団塊ジュニア世代です。そのため人口ボリュームと未婚率の掛け算で単身世帯が増えています。
そして55歳~74歳の変化は落ち着いていますが、75歳から再び急上昇します。これは平均寿命が延びてこの年代になってから配偶者と死別した方が増えたためです。
この2つの世代が大きな変化となりますが、85歳を超えて動くのは難しいことも多いでしょうし(あと、この世代は同居していなくても、子どもがいる方は多いです)、お寺にこれから変化を与えるのは現在の45~54歳(が、もう少し歳を取ってから)と考えられます。
45~54歳はこれからお寺との付き合いが本格化する世代
ほーりーは以前、京都・東本願寺で全国から門徒さん代表が集まる真宗大谷派参議会の研修会で講演したことがありますが、会場を見渡すとほとんどの方が年配男性でした。
正しい仏教より楽しい仏教を伝える大切さを東本願寺で語ってきました
しかし上で述べた結果をもとに考察すれば、こうした光景は徐々に変わっていくと考えられます。変化率の大きかった45~54歳は、これからお寺との付き合いが本格化する世代です。一人暮らしで女性の世帯主も増えますし、親が亡くなり喪主を務めることもあるでしょう。
この状況を簡単に箇条書きすると
(1)男性の単身世帯は増加 → 男性がお寺と付き合う
(2)女性の単身世帯は増加 → 女性がお寺と付き合う
(3)夫婦、家族世帯は減少 → 今までは男性がお寺と付き合っていたが、今後は減少する
(3)が減って(2)が増える分、お寺と女性の付き合いが増えるという理屈ですね。
またこれは少し前のデータですが、ほーりーが顧問を務めるアンカレッジのお墓販売実績にも今回の予測を補強する傾向は出ていました。
アンカレッジの『お寺の樹木葬』は、もともと男性に嫌われても良いので女性から求められるお墓を目指してデザインされています。このため購入者も女性比率が高いのが特徴ですが、ここで注目したいのは二つ並べた円グラフの差です。
全体(1人用、2人用、4人用)だと55%だったお墓購入者の女性比率が、1人用に限定すると71%まで跳ね上がります。これは家族用のお墓の場合、(女性が選んでも)最終的な契約者は男性がなることが多いものの、1人用だと女性割合が高まるということです。
こうしたデータを並べてみても、今回の予測は高い確率で成り立っていくでしょう。
ということで、、、
こうした社会の変化をもとに、今回の講演ではお寺にいる女性がどんな役割を担っていけるかを紹介していきました。
上に書いた図では様々な想いを持ってお寺に来た方を、男性のお坊さんとは異なる形で受け入れていくイメージをお伝えしています。そして具体的にどんなことができるかを紹介したのが、『寺族女性の5つのアクション』です。
その内容はこのブログや月刊住職の連載などでも何度か書いたのでここでは割愛しますが、「お寺は坊守や寺庭婦人で持つ」という言葉も、今後は意味が変わってくるでしょう。そんなことをお伝えさせて頂いた講習会でした。