樹木葬の競合は増えたけど、お寺と人をつなげるお墓は増えていない
ほーりーが顧問を務める霊園会社・アンカレッジ。こちらはお寺の住職が作った会社で、お参りしやすい優しい雰囲気の樹木葬墓地を作り、お寺を盛り立てることを目的とした会社です。
2018年はお墓業界も激動で、樹木葬の競合が増えてきました。年初に行われたアンカレッジのイベントでも、市場環境が厳しさを増していることが伊藤社長より語られています。
世間に「樹木葬」という言葉が浸透し、従来のお墓以外にも選択肢があることが認知されてきました。これによって需要も増加しており、競合の増加とどちらが上かという点がほーりーの興味(あるいは懸念)でもあります。
しかし今年に入って強く感じたのは、伊藤社長は数年前からこの状況を見越しており、すでに先手を打って進んでいたなということです。
2018年のアンカレッジ現状
今年のアンカレッジは3月に芝庭苑第2期、4月に泰聖寺で新規スタート、8月には安詳寺第4期、10月には妙成寺で新たにオープンしました。また5月からは福岡県の法林寺で、九州のお寺と初提携&(樹木葬ではなく)納骨堂の販売お手伝いという新しいスタイルも開始しています。
全国分布で見ると、アンカレッジ提携寺院は以下の形(妙成寺が加わる前の図なので、プラスもう一軒)です。
そして全体では、販売実績が累計1200基を超えました。
最初に述べた通り樹木葬の競争は進んでいますが、その中でもきっちりアンカレッジが伸びているのは頼もしい限りです。
樹木葬の競合が増えても、アンカレッジはなぜ躍進できたのか?
アンカレッジは、何故伸びているのか。それはお寺と人をつなぐというコンセプトを、創業当初からきっちりと貫いているためです。
少し回りくどい形で説明させて頂きますが、私は樹木葬という言葉を最初に生み出したと言われる、岩手県の知勝院を見学させて頂いたことがあります。
こちらは一ノ関駅から車で40分くらい走った山の中にあります。レンタサイクルで向かったほーりーは、アップダウンの激しい道を走ってバテバテでした。
しかしこちらが素晴らしかったのは、もともと樹木葬を里山保護の観点から生みだしたことです。里山は適度に人の手を入れないと荒れていきますが、そこを墓地とすることで管理費用を捻出し、自然豊かな風景を維持しています。このため墓石やカロートなどの人工物も、設置は一切禁じられています。
そしてこのような最先端の理念があるからこそ、アクセスが良いとは言えない場所でも、多くの方に選ばれています。要するに山を大切にしたいという想いに共感し、知勝院には人が集まっているのです。
一方でアンカレッジに関して言えば、理念としているのは「お寺とつながる生活」です。それはお寺以外の霊園からお墓作りを依頼されても断っているほど徹底しています。
アンカレッジにとって「お寺とつながる生活」は、単なるきれいごとではありません。それは企業戦略であり、「お寺とつながる生活」を作り出すことができないと、お墓が売れなくなるほど仕組みの中に組み込まれています。
いわば宗教とビジネスの一蓮托生システムですが、その結果が宗旨不問で販売しても、8割以上の方がそのお寺で葬儀や法要を依頼する数字につながっています。
樹木葬は現在も、どんどん数が増えています。しかしハード面だけで言えば似たものはいくらでも作れますが、お参りや供養を大切にするソフト面は、一朝一夕で真似できるものではありません。
そういえば、ハードだけで勝負してもデスロードですよという話は、先日15年で市場規模が半分以下に落ち込んだ石材業者さんのセミナーでも、中心テーマとして話をさせて頂いたことでした。
伊藤社長はよく、「総論賛成、各論反対」という言葉を使います。これはお寺の方とお墓の販売について話し合う時、「お寺と人をつなげる」という全体像に反対する人はいなくても、個別の手法では様々な意見が飛び交うという意味です。
もちろんアンカレッジとしても、お坊さんの意向を無視して物事を進めることはできません。しかしお寺にもこれまでのやり方からさらに一歩踏み込んで頂かないといけないことも多く、それを一生懸命ひざを突き合わせて話し合う毎日です。
そのような苦難苦闘の連続が、今のアンカレッジを作り上げています。お墓の専門家ではないほーりーを顧問に据えたことも、前例のない挑戦をお坊さん達としていくためには、はみ出し者が必要になると判断したからでしょう。
つまりアンカレッジが2018年も結果を残せたのは、この「お寺と人をつなぐ」というコンセプトで厳しい道を歩み続け、ソフト面での競合となる相手があまりいないためです。
美しい見た目だけではなく、血の通った温かみあるお墓がほしい。そうした想いを持つ方の受け皿として存在しているのが、『お寺の樹木葬』ということですね。
ということで、、、
このようなコンセプトを持つアンカレッジなので、「樹木葬」はお参りしやすい雰囲気の演出として手段ではあれど、それ自体を目的とはしていません。お寺を盛り立てたり、お寺と人をつなぐことができるのであれば、アンカレッジにとっては注力すべきテーマです。
エンディング産業展でも、お寺関連で活動している人が集まる『お寺の応援団』を結成したり、お墓以外でも様々なセミナーを開いたりしていますしね。
最近だと、お寺のコンプライアンスセミナーも始まりました。
とは言え、やはり樹木葬はお寺と人をつなぐ上で、強力なパワーを持っています。2019年も新規オープンするお寺が控えていますし、ほーりーもアンカレッジと一緒に走り続けていきますよ!