コロナで東京に引っ越す人は減り、千葉と茨城(&大阪)は転入増加
先日、お墓テーマにしたfacebookグループ『ほーりーのお墓勉強会』を立ち上げました。とてもマニアックなコミュニティですが、お坊さんやお墓関連で仕事をされている方が40人以上集まっています。そしてそこで現在ディスカッションしているのが、「東京から地方へ人口は移動するのか?」というテーマです。
そもそもの発端は、東京圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)からの人口転出が、転入を上回ったことです。共同通信の記事では、以下のように報じられています。
総務省が27日に公表した7月の人口移動報告(外国人含む)で、東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)から他の道府県への転出が転入を1459人上回り、人口流出に当たる「転出超過」となったことが分かった。
これはお墓にとって(だけではありませんが)大きな変化です。日本各地の市町村が発表しているアンケートでも、家からの近さ(だいたい30分以内)や交通アクセスは、お墓購入の条件によく挙げられます。
例えば東京都の調査では、「お墓を持つ場合に重視する条件」として以下のように紹介されていました。1位、2位はお金に関してですが、3位にアクセスが登場しています。
同様の調査結果はあちこちにあります。インターネットで目に付いただけでも
○北海道石狩市:「交通の利便性や自宅からの距離」が2位
○長野県佐久市:「自宅からの距離」が2位
○茨城県守谷市:「自宅からの距離」が2位
○埼玉県さいたま市:「自宅からの距離」が2位、「交通の便」が4位
○神奈川県横浜市:「自宅からの距離」が3位、「交通の便」が4位
○静岡県浜松市:「墓地までの所要時間」が若者・高齢者では1位、子育て・中高年では2位
○兵庫県芦屋市:「自宅からの距離」が2位、「交通の便」が3位
○香川県高松市:「自宅からの距離」が2位、「交通の便」が7位
と、みんな「お金」「アクセス」の順で選ばれています。
また、少し目線を変えてみて。香川県高松市が調査(pdf資料)した「所有墓所にどのような不満を感じているか」という質問では、1~3位が全てアクセスに関することでした。
これも他地域での調査も変わらず、お墓への不満一位は家からの距離に関してです。
○茨城県守谷市:「自宅から遠い」が1位、「交通の便が悪い」が2位
○兵庫県芦屋市:「自宅から遠い」が1位、「交通の便が悪い」が2位
そんなわけで、人々がこれからどのように住居を移していくかは、お墓にとっても影響大です。特にこれまで人口が密集する都市を土台に成り立っていた機械式納骨堂は、場所によって危うさも出てくるのではと議論しています。
コロナ後に人はどこに移り住むようになったのか?
しかし東京圏の人口が転出超過になったということは、逆に転入が増えた場所もあるということです。そこで総務省統計局の『住民基本台帳人口移動報告』から、2020年5~7月と2019年5~7月を比べた時に、「転入数-転出数」の変化が大きかった県を調べてみました。
その上位と下位5位を並べたのが、以下のグラフです。
グラフの見方を説明すると、左側5道府県はコロナ後に人口転入が増えた地域。右側5都県は人口転出が増えた地域です。
ざっと見てわかることは、東京の昨年比がものすごく大きいことですね。東京の転入は2019年から17.7%、転出は7.4%減っています。このため東京からは出ていく人も減ったけど、それ以上に引っ越してくる人が減りました。
この東京に来なかった人がどこに行ったかと言えば、千葉県や茨城県に移ったようには読み取れます。もうちょっと深く読むなら、東京に替えて千葉や茨城へ引っ越しした人もいたでしょうが、この地域から東京への引っ越しをやめた人も多かったのでしょう。
ニュースで「東京圏」から初の人口流出と言われていましたが、「東京・神奈川・埼玉」と「千葉」では完全に傾向が異なっています。ついでに栃木・群馬も上位に来ましたし、関東に隣接する山梨・長野・静岡も、転出から転入に変わりました。
また「東京・神奈川・埼玉」でも傾向が分かれていて、東京・神奈川は人口転入から転出へと反転しましたが、埼玉は転入が大きく減ったものの、まだ人口転入地域です。
一方、関西圏に目を転じると、大阪は転入が増え、(下位5位には入らなかったものの)京都・兵庫・滋賀は転出がそれぞれ増えています。
この東京・大阪の違いは面白いですが、小池都知事は自粛強硬派、吉村府知事は過度な自粛に反対派のようでしたので、こうしたリーダーの違いで差が出たようにも思えます(愛知県も東京寄り?)。
ということで、、、
このような状況の中、人材派遣大手のパソナグループが、本社を兵庫県の淡路島に移す方針を発表しました。産経新聞に掲載された南部靖之代表のコメントによると、以下のように語られています。
上場企業の先陣を切って本社機能を地方に移転する。淡路島では賃料などが首都圏に比べて5分の1程度と安く、節減できた経費は社員に還元できる
あと、蛇足ですが、同じく淡路島に宿泊施設「空中座禅道場」なるものも作られるそうです。
本社機能を東京から淡路島に移すと発表して大きな話題になっているパソナグループですが、「空中座禅道場」という宿泊施設を作ることが発表されました。
宿坊ではないと思いますが、なんかとても名前が気になるのでこんなのあるよとシェアします。https://t.co/i1519J6BTA
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) September 5, 2020
都心部のオフィス需要が落ちているという調査や、JR東日本が通勤定期の値上げ検討に入ったという報道も出ています。パソナの判断に追随する企業がこれから増えても不思議はありません。
2018年に東京から千葉県へ引っ越ししたほーりーも、利便性はほとんど変わらないのに毎月3万円以上も家賃が下がりましたしね。テレワークの普及によって私みたいな判断をする人は、これからきっと増えるでしょう。
そんなわけで一応の結論として。東京と神奈川以外の関東および近県ではお墓需要が上がる可能性が高く、関西では大阪以外は需要の微減が続くとデータからは読み取れます。
まあ、今回は3カ月だけの数字ですし、今後も同じ傾向が続くかは分かりませんが。ただ、ほーりーは去年時点で、このブログや連載している月刊住職などに、いずれ東京から地方に人口が移動すると予測した記事を書いています。
なので短期的にはともかく長期で見れば、都心部から地方への人口移動は増えていくという予想は、変わらず持ち続けています。