お寺がやりたいことと、お寺に行きたい人がやりたいことにはズレがある。
私が住んでいる府中市に、studio-L の山崎亮さんが来る! ということで、このチャンスは逃せないと、講演を聴きに行ってきました。
山崎亮さんはコミュニティデザイナーとして有名な方。このコミュニティデザインとは文字通り「コミュニティ」、つまり人と人とのつながりをデザインすることです。
ご著書にはこのようなことが書かれていました。
この50年間にこの国の無縁社会化はどんどん進んでいる。(中略)住宅や公園の物理的なデザインを刷新すれば済むという類の問題ではなくなっている。僕の興味が建築やランドスケープのデザインからコミュニティ、つまり人のつながりのデザインへと移っていったのは、こんな問題意識があったからだ。 |
しかし果たして、人のつながりをデザインするとはどういうことなのか?
例えば島根県の海士町でのお話。海士町は鬼太郎の町として有名な境港からフェリーで渡った、人口2400人ほどの離島です。こちらはもともと島に住んでいた方とUターン者、Iターン者との間でコミュニケーションが取れていないことが課題でした。
そこでこれらの様々な背景を持つ人を混成させながら「ひと」「暮らし」「環境」「産業」の4つをテーマに興味のある人でチームを作り、町づくりプロジェクトを開始。1人でできること、10人でできること、100人でできること、1000人でできることと分けながら、1人でできることはすぐにやろう、10人でできることはチームでやろう、100人、1000人でできることは行政を巻き込もうと、人の交流を深めながら住民が自主的に動き始めるコミュニティが動き出していきました。
また東京都立川市はまんがの町。「聖☆おにいさん」など数々のまんがやアニメ作品の舞台となり、”聖地”として訪れる人も多い場所です。そこで立川市旧庁舎に作られたに「立川まんがぱーく」を拠点に、様々な市民団体をまんがで結びつけるプロジェクトを実施。
美味しんぼで出てきた料理を作る料理教室なんていった感じで、約50の団体を巻き込んでいったそうです。さらに一人だけど何かをしたい方などをアクティベーターとして養成したり、趣味をテーマに人と人とを結びつけたり。このような活動をここまで9年にわたり、一年に60地域ほどのデザインに関わられているとのことです。
私自身、お寺はコミュニティ作りがこれからの大切な役割ということを話していますので、ものすごい刺激になりましたし勉強になりました。特に興味深くお聞きしたのが「行政が住民にやってほしいと思っていること」と「住民がまちのためにやりたいと思っていること」はずれているという点。
行政は「防犯・防災」「道路清掃」「地域福祉」「社会教育」などをやってほしいと考えているが、住民は「音楽イベント」「チャレンジショップ」「コミュニティカフェ」「ガーデニング」などをやりたいと思っている。
この間をどう取り持ち、お互いが希望していることを両方実現できるようにするか。これがコミュニティデザインなのだとおっしゃられていました。これはお寺に置き換えてみても、とても納得のいくお話です。
私が日蓮宗さんの企画したお寺活性アイデアコンペの審査員をさせて頂いた時、多く出てきたのは「料理教室」「お泊り会」「寺子屋」「座禅や写経などの仏教体験」「音楽コンサート」「落語会」「防災拠点」などがありました。
簡単にまとめれば、「遊びたい」「話したい」「学びたい」がキーワードなのではないかと思っています。
しかしお寺やお坊さんがやりたいことは、仏教を「教えたい」、仏教によって「救いたい」が中心なのではというのが私の感触です(もちろん、お坊さんによって大きな差がありますが)。
この中では「教えたい」と「学びたい」は相性が良さそうですが、それさえもお坊さんが教えたいことと一般の人が学びたいことが完全に一致しているかと言えば違うようです。
この「遊びたい」「話したい」「学びたい」と「教えたい」「救いたい」をどう両立させていくのか。これがお寺コミュニティのデザインと言えるのかもしれませんね。
あ、山崎亮さんの本もおすすめです。こちらもとても勉強になりました。
コミュニティデザイン―人がつながるしくみをつくる 山崎 亮 著 |