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お墓さえ売れれば、石材業界は元気になるという勘違い

鳴本石材株式会社

先日、岡山県にある鳴本石材さんの展示会で、『タブーを超える7つのアクション』を講演させて頂きました。

鳴本石材は墓石を中心に、石材加工と総合商社機能を併せ持った会社です。本社(今回、お呼び頂いたところ)は笠岡市にありますが、こちらは生きた化石として知られるカブトガニが生息する地として知られています。

そしてもう一つの名物が、北木石(きたぎいし)です。笠岡市は本州部以外に瀬戸内海に浮かぶ大小31の島々(そのうち7島が有人島)で構成されていますが、そのうちの最大の島・北木島で採掘されているのがこの北木石です。大阪城の石垣にも使われるなど、古くから名石として知られています。

そんな石材の産地に根を張り、西日本の石材業でも有数の規模を誇るのが鳴本石材です。特に国内最大規模の加工能力を誇る「笠岡工場」は中国加工が主流の現在でも国内加工の空洞化を防ぐべく、国際競争に負けない体制を築いています。

鳴本石材の笠岡工場

工場も少し見せて頂きましたが、これがまた広いのなんの。そして今回は年に2回の墓石展示会で、日本各地から石材業者さんが商談に訪れていました。

鳴本石材秋の展示会

あと、なんとこちらでは食事や飲み物(アルコール含む)が、すべて無料で提供されています。いや~。なんだこれ。今回の展示会への力の入れっぷりが伝わりますね。石屋さんが焼いた石窯ピザなどもありましたよ。おいしかったです☆

お墓需要は増えているのに、石材需要は減っている

そして今回の本題ですが、ほーりーの講演について。今回お呼び頂くにあたって鳴本石材の鳴本社長からは、「石屋が元気になる話をしてほしい」というリクエストがありました。

そもそも石屋さんはなぜ、元気がない(と、言われる)のか。それは市場規模がどんどん落ち込んでいるためです。経済産業省が出している工業統計調査によると、15年で半減以上というデータが出ていました。

そいつをほーりーがグラフ化したものがこちらです。

石材業界の市場規模推移グラフ

いやいや、びっくりするほどきれいに市場が落ち込んでいますね。これを見れば石屋が元気がないと言われるのも、仕方ないと思います。

が、ちょっと待てよ。霊園会社で顧問を務めるほーりーから見ると、この市場変化はとってもおかしいゾ!

そもそも少子化、人口減少と言われる日本社会ですが、団塊世代が老年期に入るのはこれからのため、死者数はしばらく増えることが予想されています。業界的にも右肩上がりが続いており、それをグラフ化したのがこちらです。

葬儀業売上高と取扱件数の推移

まあ、これ自体は明るい話ではないですが、シンプルに考えればお墓の需要は増えています。なのに石材需要は急速に冷え込んでいるわけです。これって業界的に、もしくはプロとしての仕事的にありえないほどやばくないですか? と、思ったりもします。

ちなみに若い人が少なくなっている結婚式業界を示したグラフはこちら。

結婚式場業売上高と取扱件数の推移

こうした状況だったら、石が売れないよ~って嘆くのも分かるんですけどね。

タブーを超える7つのアクション

ほーりーの石材講演

お墓の需要は増えているのに、なぜ石材需要は減っているのか。これは以下の3つの理由によるものでしょう。

○個々のお墓の小規模化
○安い海外からの石材輸入が増えて利益率が圧縮されている
○納骨堂や樹木葬といったお墓の種類の多様化

うん。お寺の樹木葬を推進しているほーりーとしても、まさに逆の立場で当事者ですし。なので石材業の皆様から敵と思われたらどうしようと、ちょっとドキドキしていました。

しかし本来であればお墓ニーズに一番近くで触れていた石材業界からこそ、こうした新しいお墓の形は提案できたものかもしれません。お墓は単なる石ではなく、亡くなった方の眠る場所であり、言うなれば供養そのものです。

ですがほーりーが持つ違和感として、石材の説明はほとんどが、石の素材ばかりで語られています。品質は大切ですが、そこには一般消費者の心に響くストーリーがありません。

これは結婚式の衣装に例えてみれば、分かりやすいと思います。ウェディングドレスは白だけでも無限にバリエーションがありますが、タキシードは白、黒、グレーの三択のみです(ほーりーが入ったレンタルドレスショップはそうでした)。

石屋さんが石材の品質だけをあれこれ語っても、それは男性にタキシードを説明しているようなものです。もちろん熱心に聞いて下さる方はいるでしょうが、ほとんどの方は違いも判らなければ、それを丁寧に見極めて選ぶモチベーションもないわけですよ。

Aラインがどうとか刺繍のデザインがあれこれなど、全部白なのにテンション上げまくる花嫁さん的なお客さんは、ごくごく少数派だと推察されます。

なので講演後の懇親会で話題に出たのですが、違いを伝えたいのであれば、時にはこのくらいの脱線だって必要と思うのですよね。

石材業界には多くの強みがある

それではこれから石屋さんは、どんなことをしていけば良いのか。ほーりーは石材業界は日本の中でも特殊な立ち位置にあり、他にはない強みをたくさん持っていると考えています。

それを問いかけたのが、以下の図です。

石材業者は何が得意か?

たとえば「石の専門家」であれば、お墓以外にも様々な分野で石材活用法を開発していく道があります。ほーりーが提案したのは、今年の酷暑で問題になった熱中症対策や観光立国のための街並み整備に石畳の技術革新が行えないかというものでした。

石畳の技術革新

また、「お寺を支える専門家」であるならば、現在様々な企業がお寺と手を組みたがっているので、それをマッチングさせるコンサルティング業を行うこともできます。それこそ、宿坊や仏前結婚式を提案したりとかですね。

「販売の専門家」であるなら墓石に限らず何でも売っていけば良いでしょうし、「死と向き合う専門家」であるなら従来のお墓の形にとらわれず、新しいものを生み出していったって良いはずです。

逆に言えばこうした特殊なポジションにいながら、どの専門家でもないので従来のお墓を売っていくしかできませんというのであれば、それはもはや業界として沈みゆくのみでしょう。

石のお墓がV字回復して売れれば石屋は元気になるなんて夢見ても、そんなことはまず起こらないのです。

ということで、、、

石材品質にプライドを持つことは、とってもとっても大切です。しかし石材品質さえ伝われば売れるのであれば、お墓需要が伸びている中で市場がダダ下がりなんて状況には絶対になりません。

これはほーりーがお坊さんによく話していることとも、まったく同じです。仏道に精進することは大前提ですが、それさえしていれば仏教が広まっていくわけではありません。

先日、お坊さんと一般の人では僧侶を評価する基準が異なるという話を書きましたが、これは石材業界にも言える話(むしろ、もっと顕著かも)です。

お坊さんは僧侶を力量で判断し、一般の人はお布施の額で判断する

僧侶の研鑚は無意味かと悩んだお坊さんに、ほーりーが伝えたこと

なのでそうした自分たちが大切にしている価値観には関心を持たない相手に対して、どうつながって伝えていくか。今回は石材の良さと一般のニーズを結びつける発想法として、『タブーを超える7つのアクション』をお話させて頂きました。

現在行っていることの延長だけでは、石材業界に未来はない。タブー(無意識に引いている心理抵抗)を越えなければ、石の良さは理解されない。ほーりーはそんな風に考えていますよ。

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