宿坊を開設するための3つのハードル。これを超えるために知恵絞っています
お寺や神社が宿坊を作りたいと考えた時、開設へのハードルは大きく分けて3つあります。一つは初期費用、二つ目は旅館業の許可取得、そして最後は宿泊業を営むための技術習得についてです。
これは4月に宿坊スタートアップミーティングを開催した時も、大きな議題となったテーマでした。そこでここではこれらの宿坊を開設するための3つのハードルを紹介します。
宿坊を開設するための3つのハードル
初期費用
初期費用はもちろん、安いものではありません。ですが例えば脱サラした夫婦がゼロからペンションを開業しようと考えた場合、土地と建物の取得だけで数千万円~1億円以上の金額がかかります。しかし宿坊の場合は境内に土地と建物があれば、建物のリフォーム費用と宿泊者を受け入れる為の備品や什器など、数百万円のみですんだ事例もありました。
銀行からの借り入れがなければ、宿泊費は安く抑えられます。他のホテルや旅館より、圧倒的に初期費用を回収しやすい状況に宿坊はあります。
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旅館業の営業許可取得
開設には旅館業法、防火設備設置などを定めた消防法、食事を提供する場合には飲食店営業許可などが関係し、旅館業法と飲食店営業許可は保健所が、消防法は消防署が管轄しています。
旅館業の許可取得はある意味で最もハードルの高い部分です。旅館業にはホテル・旅館・簡易宿所・下宿の4種がありますが、宿坊を開く場合は一般的に、「旅館営業」または「簡易宿所営業」の許可が必要です。
これは都道府県知事から発行されるもので、厚生労働相のサイトには「都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならない」と記載されています。
このためお寺の所在地や条件によって、行政の判断も変わってきます。許可が下りずに苦労しているというお寺もあれば、それほど大きな指摘もなく、少し改装したら10日程度で許可が下りたというお寺もありました。
ここは経験豊かな専門家(税理士や建築事務所など)に相談したり、率直に保健所に話を聞きに行っても良いと思います。
宿泊業を営むための技術・ノウハウの習得
接客、客室管理、備品の調達、料理、税務知識など多岐に渡ります。さらに言えば24時間他人と接し続ける、メンタル面のコントロールも欠かせません。
しかしこれらはすべてが整うのを待っていたら、いつまでたっても宿坊はできません。むしろ宿坊を作ってからでないと、身に付かないスキルばかりでしょう。
そこでスキルが足りないのであれば、それを埋めにいく戦略が考えられます。例えばいきなり毎日営業するのではなく、まずは知り合いや期間限定での受け入れという方法があります。
また、調理技術がないのであれば素泊まりのみとするのも一つの方法ですし、宿泊部門と宗教部門を分け、宿泊は外部委託できないかということも考えられます。