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コロナ禍においても、宿坊の高級プランが増えている

01.宿坊
 

 2018年に京都・仁和寺の境内に1泊100万円の宿坊ができて話題になりました。そしてほーりーも以下の記事を書きました。

 宿泊価格が不当に低いと、宿坊自体が消えていく

 こちらで書いたことをまとめると、以下の通りです。

 ○宿坊はブームと言われながらも採算が合わずに数を減らしていた
 ○2017年頃から高級路線の宿坊が出始め、宿坊開設が増えていった
 ○宿泊料の高い宿坊は業界全体に活性をもたらす

 お寺への宿泊には質素や清貧のイメージが強すぎて、宿泊料を上げることにお寺の方も抵抗が強いようでした。しかし海外からの旅行者が増え、需要の増加と共に先入観を持たない富裕層が泊まり始め、2017年頃からブレイクスルーが起きています。その中で一つの象徴的な存在となったのが、一泊100万円に設定された仁和寺の宿坊です。

 この状況は2020年に入り、コロナによって止まりました。訪日外国人は激減しましたし、日本人も旅行を躊躇しています。しかし以下の記事で予測したように長期トレンドには変わりがなく、2021年に入ってまた高級路線の宿坊は出始めています。

 コロナ後の宿坊は、地方需要増大・宿泊費上昇・長期滞在化が進む

 ここで述べた新たな旅行環境の変化は、以下のものです。

 ○短期的には安心優先(3密回避)
 ○中期的には宿泊価格が上がる
 ○長期的には宿泊日数が延びる & 需要が分散される

 このどれもが宿坊には有利に働きます。コロナはこれからも拡大と収束を繰り返すでしょうが、それでも社会が対応できる幅は増えていくでしょうし、これから追い風は吹いていくでしょう。

コロナ禍においても、宿坊の宿泊料は上がっている

 そしてこのところ、高級路線の宿坊の話題が続けて飛び込んできました。今回はそんな話を紹介します。

京都府・智積院会館

智積院会館のロビー

 今回、新たにおお! っと思った宿坊の一つが、真言宗智山派の総本山である智積院に建てられた智積院会館です。いきなり少し変わり種ですが、こちらはふるさと納税のプランとして、寄付金額150万円の宿泊コースが誕生しました。

 【宿坊 智積院会館】≪1日1組限定≫総本山智積院の名勝庭園を独り占め 豪華なご夕食付プラン

 インターネット上にあった簡易シミュレーターで調べると、給与収入が4000万円以上の方だと使えそうですね。なお、プラン内容を見ると、以下のような特典が用意されています。

 ○豊臣秀吉が作庭した名勝庭園を独り占めしての夕食(ライトアップもされます)
 ○ドリンク飲み放題
 ○国宝障壁画や名勝庭園の案内付き
 ○瞑想や腕輪念珠作りなどの体験
 ○京都の伝統産業グッズのプレゼント

 こちらは2020年に宿坊が建て替えられたばかりです。私はちょうど知り合いのお坊さんがいたこともあって内部を見学させて頂きましたが、とてもきれいな施設でした。

 そしてやはり目玉は庭園を見ながらのお食事ですね。これはちょっと、他では体験できない企画と思います。

滋賀県・和空三井寺

和空三井寺の客室

 三井寺(園城寺)の境内にあり、四百年以上の歴史を持つ僧坊・妙厳院(みょうごんいん)を宿泊施設に改装した和空三井寺も、この秋に新たな高級コースが登場しました。それがリンク先にある以下のプランです。

 1日1組限定・高級宿坊【和空三井寺】で3密回避のオトナ旅。織田信長ゆかりの国宝客殿で座禅体験×専属料理人による特別なおもてなし

 こちらは一棟貸しの宿坊ですが、宿泊料金は14万円~(大人1名あたり、税・サ込)となっています。その内容は以下のものです。

 ○織田信長が眺めたとされる名勝史跡が残る光浄院客殿(国宝)の特別案内
 ○観音堂で一組限定の特別祈祷を受ける
 ○著名な植栽ディレクターや空間デザイナーが手掛けた宿泊空間
 ○これまで非公開で文化財にも相当する不動明王像を拝することが可能
 ○「清元」の総料理長が一夜限りの専属料理人となる夕食

 三井寺自体が天台寺門宗の総本山であり、国宝・重要文化財が100点を超える歴史の宝庫でもあります。そんな特別なお寺で味わえる体験は、一生の思い出に残りそうですね。

山梨県・迎賓館えびす屋

 日蓮宗の総本山・身延山の街中にある宿坊・覚林坊が中心になって新たに開かれた一棟貸しの古民家オーベルジュ(宿泊施設を備えたレストラン)です。こちらは寺社Nowに多くの写真が載っています。今回紹介する4軒の中で、こちらだけは私は行ったことがないため、写真はリンク先でご覧ください。

 聖地身延山に誕生!1日1組限定の古民家オーベルジュ「迎賓館えびす屋」に託した宿坊女将の願い

 迎賓館えびす屋は一棟貸しの和モダン邸宅です。宿坊とは名乗られていませんが、身延の宿坊が立ち上げた宿であり、その流れを受け継ぐ一つの形ではあります。宿泊料金は平日9万円、週末10万円(季節や人数によって変動あり)です。そしてその特徴をまとめると、以下になります。

 ○築90年の旧邸宅をリノベーションし、伝統的な欄間や大正ガラスの縁側などを備えた古民家の宿
 ○一流シェフが地元食材をふんだんに盛り込んだローカルガストロノミーを創作
 ○室内装飾や書、襖絵など、地元で活躍するアーティストが空間を演出
 ○宿坊の女将が中心となり、身延の街を盛り上げるプロジェクトを推進
 ○岩手県の『八木節』と身延山「御会式万燈行列」の『纏(まとい)』を組み合わせた名物パフォーマンス

 明治大正期の歴史が詰まった建物に、多くの方の想いが込められて作られたここだけにしかない空間です。身延山久遠寺までお参りに行くにも良い場所ですし、こちらもまた特別な宿泊滞在になるでしょう。

青森県・おおま宿坊普賢院

おおま宿坊普賢院の客室

 上記3軒はそれぞれ総本山クラスの巨大寺院境内やその門前に建っていますが、それとは別に過疎地の小寺院でありながら、宿泊価格を上げてチャレンジしている宿坊もあります。それが本州最北端の地にある『おおま宿坊普賢院』です。

 以前、下記の記事でも詳細をお伝えしましたが、宿泊料を18000円にしても好調が続いています。

 コロナで大ダメージ受けたのに、予約が前年比1.5倍の宿坊普賢院

 こちらの特徴は以下のものがあります。

 ○本州最北端、過疎地にある秘境のお寺
 ○檀家さんはゼロ軒、放置された空き寺を菊池雄大院代が宿坊へと改装
 ○お坊さんを貸し切りできる宿として、坐禅や人生相談を求めて宿泊者が訪れる
 ○大間の名物・マグロや地元の食材をたっぷり使った食事が頂ける
 ○地域活性の事例として、高校の教科書にも紹介された

 行くのはかなり大変な場所にありますが、それだけにこちらのお寺で過ごす一日は特別感が満載ですよ。

ということで、、、

 先日、他にも知り合いのある宿坊さん(そちらも人里離れた立地のお寺)とZoomで会話していたら、地元の方と連携しながらプレミアムな宿泊コースを作っている最中という話をお聞きしました。この流れは少しずつまた、各地の宿坊でも増えていくと思います。

 まあ、ほーりーの予算ではこうした宿坊をあちこち泊まり歩くことは難しいですが、それでも少しずつ泊まってみたいですね。そして高級宿坊がたくさんできれば庶民的な宿坊にも新たな道が開けますし、それは相互に作用して宿坊文化を発展させてくれます。

 その意味でもこうした宿坊の高級プランが増えていく流れは、期待したいところです。

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和空三井寺の客室

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