宿坊スタートアップミーティング開催。熱い質問が飛び交いました!
11/29に大阪で、宿坊スタートアップミーティングを開催しました。昨年、京都で開催してから1年半ぶりです。それほど大きな会議室ではありませんが、会場には30名ほどの方が来られて満席状態。宿坊への期待の高さが伝わってきました。
そして当日は熱のこもった質問が飛び交い、充実した一日になりました。その中で今後の宿坊に期待されていることや、疑問・不安など、参加者からもダイレクトな反応が得られたのは大きな成果です。
ということで、今回は宿坊スタートアップミーティングのレポートです。
宿坊スタートアップミーティングレポート
今回の宿坊スタートアップミーティングは3部構成です。最初にほーりーから自民党観光立国調査会でも話をした『宿坊の現状と未来予測』を、続いて大阪の下寺町に宿坊を作る和空プロジェクトの熊澤克己社長からは、宿坊創生プロジェクトの概要と今後の展望について紹介させて頂きました。そして休憩を挟んで質疑応答・意見交換という形です。
宿坊の現状と未来予測
まずは宿坊の現状と未来予測について。
宿坊は平安時代には原形が生まれ、江戸時代に諸外国も驚くほどの旅行大国を作った日本の中で、旅のインフラ作りに重要な役割を果たしました。
が、明治時代の廃仏毀釈やその後の戦争、核家族化によるライフスタイルの変化などにより、多くの宿坊が消滅していきます。
しかし平成の世になり、宿坊にはこれまでと全く異なる形で光が当てられるようになりました。この辺は以前にブログにも書いたので、ご興味あれば読んでみてください。
ここで重要なのは、宿坊の歴史がV字を描いていることです。落ちて上がるストーリーは、人の心をつかむ上で大きな力を持ちます。
続いて宿坊を開設する3つのメリット。
○宿坊は開業コストが安い
○宿坊は集客に有利
○宿坊は5つの問題を解決する
や、宿坊サクセスストーリーなど。細かく書いたら切りがないですが、解決できる5つの問題については、以下の記事をどうぞ。
世界中が注目する「宿坊」を作ることで、日本が解決できる4つの課題
ちなみに記事になかった最後の1つは、大規模災害時の避難施設です。
一方で宿坊を作り、運営する上で気を付けていかなければならないのがこちら。
全国寺社観光協会や和空プロジェクトはビジネスサイドの人間です。だからこそこれまでとは全く異なる視点から宿坊作りを開始できている点はありますが、そこに魂を入れられるかどうかはお坊さんや神主さんにかかっています。
そしてほーりーは旅人として、ビジネス視点からも宗教視点からも距離を保ちながら、バランサーの役割を果たしています。両者が引っ張り合うのではなく両輪で回らないと、宿泊者にとって良いものにならないですし。これも、きっつい役割ですけどね。
まあ、そんなわけで、宿坊がこれからどんな社会的ポジションを占めていくかを、ざくっと紹介させて頂きました。
宿坊創生プロジェクトについて
続いて、和空プロジェクト・熊澤克己社長の講演。今回は実はほーりーも分かりにくい、全国寺社観光協会と株式会社和空プロジェクト、そして株式会社和空について説明して頂きました。
全国寺社観光協会が全体監修して宿坊創生プロジェクトを推進しつつ、和空プロジェクトが宿坊を建設、運営。和空はサイト開発やイベントなどで広報を担います。
そして和空プロジェクトによる宿坊建設・運営業務の内容はこんな感じです。
こうして宗教と宿泊を切り分け、宿泊施設の建設、運営を請け負うことにより、宿坊開設のスピード化(およびコスト削減)を図ります。お寺や神社だけで宿坊を作るより、全体で8カ月の短縮が想定モデルです。
また、ハコモノを作るだけでは意味がありません。このプロジェクトの第一弾・大阪下寺町の宿坊では一階に大広間を用意し、様々なお寺体験に参加する機会を作ります。
単に人を泊めるだけなら全部客室にした方が経済的にはパフォーマンスが高いでしょうが、宿坊を寺社との接点と考えるなら、この空間は欠かせません。
他にも様々な具体的金額や、寺社との連携方法について言及がありました。
質疑応答&意見交換
今回はお坊さん、神主さんや、宿坊に注目している企業の方など、様々な方が集まりました。
質問も多岐に渡りましたが、主だったものを挙げてみると
●宿坊はお寺が持つのか、和空が持つのか
●歴史のないお寺でも宿坊はできるか
●小さな宿坊は作ることができるか
●僧侶の資質の担保はどのようにするか
●リスクはどんなものがあるか
●お坊さんに急な用事が入り、指導できない時の対応は
●近所の民泊や巨大開発されたホテルとの兼ね合いは
などがありました。
基本的に宿坊創生プロジェクトでの宿坊は、すでに決まった形があってどんと建てるものではなく、お寺や神社と話し合った上で、形を作っていきます。このため「宿坊はお寺が持つのか、和空が持つのか」という質問ひとつとっても、両者のパターンがあり得ます。
ただし現状、一日一組など小さな宿坊への対応が難しいのはお伝えしておかなければならない項目です。これは旅館業法との絡みによりますが、人口密集地などではたとえ一部屋だけ宿泊施設にしたいと考えても、防火設備だけで数千万円かかることがあります。
そうすると小さな規模では初期投資を回収できず、ある程度の宿泊人数&それが埋まる立地でなければ宿坊が建てられません。
特に現在はまだ来年3月でようやく一軒目がオープンと、冒険のできない(というか、建てるだけで十分冒険)段階です。これが数年経ってノウハウやブランドが確立し、地方にも宿坊が建てられるようになれば状況は変わってくるでしょう。
私としては「小規模展開」「地方進出」「木造化」は今後目指さなければならない方向と考えていますが、今の時点ではまだまだリスクが大きすぎます。
その意味で小規模宿坊を考えていたお寺の方にはちょっと申し訳ない状況になりましたが、すぐには無理でもまだまだこれからということで。
来年の宿坊創生元年に向け、現時点でできることとできないことを語った宿坊スタートアップミーティング。これからの展開にもぜひご注目ください。
終わった後も個別相談を行い、後日訪問を約束したお寺もあったので、ここからまた新たな宿坊が生まれたらと期待しています。