20年後に本堂を建て替えるため、宗教法人が資産運用する選択肢

先日、東京でお坊さんや寺社関連の方と集まり、お金について語る会を開催しました。そこで20年後に本堂を建て替えることが、人生の大きな目標という方のお話が出てきました。
この話は一昔前であれば、檀家さんから寄付を募るという選択が第一に挙がったものかもしれません。しかし現在はそれが理解を得にくくなっていることは、多くの方が認識されていることでしょう。
そこで考えられる手段として、新しい収益基盤を作る方法があります。例えばほーりーが顧問を務める霊園会社・アンカレッジでは、境内に樹木葬庭苑を造営し、そこから得られた資金で本堂を建て替えたお寺があります。また宿坊を作ることで、廃寺になりかけていたお寺を復興させたお坊さんもいます。ご祈祷や御朱印などに力を入れて、境内にお堂を建てたお寺もあります。
ただしこれらは、すべてのお寺が行えるわけではありません。どうしても条件は限られますし、住職のやる気だけでは何ともならないこともあるでしょう。
そこで今回はお金の話をぶっちゃけようというコンセプトがあり、参加者の中には宗教法人専門の資産運用アドバイザーもいたので、お寺の資産運用に関する話も意見が飛び交いました。
宗教法人が資産運用をする驚異的なメリット
投資や資産運用は、必ずうまくいくとは限らない世界です。それも個人であれば自己責任で済みますが、多くの浄財を預かるお寺や神社(宗教法人)となれば、責任は重くのしかかります。
しかし現在はここ数十年続いたデフレから、インフレ社会へと変化してきました。これは一言で述べれば、銀行に預けているだけではお金の価値が失われていく時代です。このためこの傾向が続くなら、お堂や社殿の修復・建て替えのためにお金を積み立てていっても、その時を迎えた時には全然お金が足りなかったということになりかねません。
そこでお寺や神社の資産運用は、これからもっと真剣に考えられてもよいと思います。
宗教法人が資産運用を行う何よりのアドバンテージは、非課税であることです。通常であれば個人が資産運用を行う場合、まずは給料から所得税、住民税、社会保険料が徴収された後の手取り額から、実際の投資に入ります。
またそこから上手く利益が出ても、運用益から20.315%は税金として引かれます。NISAなどの非課税制度もありますが、これも上限額が決まっています。このため全額非課税は怖ろしいほどメリットが多い話です。
ただしもちろん、宗教法人にも縛りはあります。基本的には資産保全が目的なので、リスクの高すぎる商品やレバレッジを効かせた短期売買などは認められません。また可能であれば、資産運用するための目的もはっきりさせておくといいでしょう。今回の冒頭で紹介した本堂を建て替えるための積み立ては、まさにうってつけです。
現在は資材や建築費、人件費が高騰しており、この傾向はこれからも続くだろうと思われます。コツコツと預金で貯めても、20年後にはインフレ負けしてまったく予算が足りない可能性はあるわけです。
それであれば長期・分散投資でリスクを抑えつつ、複利の力でお金を増やしていくことは、寺社にとって始めやすいものではないでしょうか。もちろん最初にじっくり学んだり、まずは個人で資産運用して理解を深めるといった慎重なステップは必要ですが、少しずつでも取り入れていくことは意義あることと思います。
と、いうことで、、、

今回のお金について語る会。資産運用を行っている宗教法人は、全体の10%にも満たないだろうというご意見も出ていました。
もちろん運用に回すお金など、全くないよというお寺や神社も少なくないでしょう。しかし金利が上がる社会では、資産のある者がよりお金を増やしていき、ない者はより苦しくなる二極化が進みます。
これはこれで社会のバグな気もしますが、経済の仕組みがそうなっている以上は仕方ありません。これを問題に思うなら富める側に回って、社会に還元するのが現実的でしょう。
また前回書いた『金融知識は儲けるためでなく、仕事のパフォーマンス向上に必要となる』では、お金の悩みを減らすことで自分が最も大切にしたいことと向き合う環境が整うという意見も述べました。
これに照らし合わせれば、普段は淡々とお金を積み立てるほったらかし投資をすることで、檀家さんや参拝者と向き合いやすくなることもあるのではないでしょうか。経済的な余力を作る上でも、お参りしやすい環境を維持する上でも、宗教法人の資産運用は一考に値する手段です。
ちなみに以前、月刊住職の連載(2023年5月号)でも詳しい話を書いたことがあるので、ご興味ある方いましたらバックナンバー取り寄せてみてくださいね。
