テクノ法要に見る、西本願寺に現れた黄金サイクルの兆し
先日、築地本願寺で行われたテクノ法要に参列してきました。
まず、テクノ法要とは何か。こちらは福井県の照恩寺・朝倉行宣住職が作った、名前の通りテクノのリズムに乗せた法要です。テクノってなんだということは音楽に疎いほーりーが語るより、wikipediaの方が信頼置けると思うので引用すると
テクノポップ(Technopop/Techno Pop)は、シンセサイザー・シーケンサー・ヴォコーダーなどの電子楽器を使ったポピュラー音楽。1970年代後半から日本で使われた音楽用語で、日本独自表現である。
とのこと。
近年の代表的なアーティストとして、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅ、さらにはピコ太郎なんかも紹介されていますね。うん。ほーりーもPerfumeの音楽は時々聞くので、耳に馴染みも良いです。
また、wikipediaでは「テクノ(ダンスミュージック)」と「テクノポップ」は分けて紹介されていますが、細かなことは省略するとして。おおざっぱに言えば、1980年代後半にアメリカのデトロイトで発祥した音楽が、様々に分かれながら電子音を押し出した曲としてテクノミュージックにつながっているという感じです。
築地本願寺で見たテクノ法要
そして、本題のテクノ法要。これがものすごく、かっこよかったんですよ。口で説明するより、You Tube見て頂いた方が早いので、埋め込んでおきます(これは、築地本願寺で行われたものではありませんが)。この動画は15万回近くも再生されて大人気ですよ。
さらには機材購入のためのクラウドファンディングも行われ、30万円以上の寄付が集まりました。
「テクノ法要」は、「極楽浄土は光の世界」という認識を基に、現代の光(プロジェクタ投影・舞台照明)で装飾した寺の内陣で、昔から伝わる声明(お経など)にテクノのリズムを乗せて勤める法要です。
朝倉さんのお話によると、新しいことをしているみたいに見えるがそうではない。先人も極楽浄土のイメージを当時の最高技術で表現していたし、それが今は電気を使う試みになったとのことです。
お寺や仏教の見方を変えるのではなく、こんな形もあるよという見方を増やすための法要。そもそもとしてお寺にお参りに来られる方は年配者が多くて次世代につながっていない危機感があり、子供たち中心の花まつり法要や子供報恩講といった取り組みだけでは限界を感じる中で「テクノ法要」も生まれました。
築地本願寺では開始前から大行列。
そしてこれまでにないお浄土の世界が繰り広げられます。
入堂時に配られて手首につけたリップルライトが、会場中でピカピカ光る。
いや~、もうお寺の中が大興奮で熱気にあふれていましたよ。
出る杭を伸ばし始めた西本願寺の黄金パターン
そしてこのテクノ法要を見ながら、このところの西本願寺(浄土真宗本願寺派)で生まれている黄金サイクルについて考えていました。
テクノ法要は先に書いた通り、福井県の照恩寺・朝倉行宣住職が作られた法要です。それがネットを通して話題になり、先日は本山の西本願寺で、そして今回は東京拠点とも言える築地本願寺で開催されました。
地方寺院の一住職の試みが、あっという間にメジャー化するスピード感。この流れが本願寺派は飛びぬけています。
例えば西本願寺や築地本願寺では、過去にAV女優やコンドームの達人を呼んで「性に悩む若者」をテーマにしたシンポジウムを開催されていました。
このものすごくとがった企画は、佐賀エイズ研究会や佐賀のホスピスを進める会に所属する古川潤哉さんの想いがなければ成し得なかったでしょう。しかしそれを拾い上げて本山で開催してしまう組織としての突破力は胸が熱くなります。
また、西本願寺では先日「ごえんさんエキスポ」が行われていました。こちらは30以上のお寺活動団体がブースを開いたイベントです。こちらに出てきた団体名を見ると、本当に日本各地で様々な活動をされているお坊さんが可視化されていました。
12/9~10に京都・西本願寺で行われる『ごえんさんエキスポ』。仏教ブースが約30 も設置されるなど、大規模で大きな話題になっています。私の知り合い団体もめちゃくちゃ集まってるなー。面白そうです。https://t.co/cqUvcqWqKz
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2017年12月1日
他にもちょっと毛色は異なりますが、エンディング産業展では浄土真宗本願寺派総合研究所さんが実施した、お坊さんの悪い印象を聞くアンケートが話題に上がっています。
お坊さんの悪い印象を教えてくださいと聞く、西本願寺が攻めている!
あとはお寺での脱出ゲームも開催されたり。謎を解きながらお寺のことが学べる仕様になっていたようです。
こうした流れ。以前にほーりーは西本願寺で以下の講演をさせて頂きましたが、『小さな階段をたくさん作る』という考えが、ほんのちょっとでも役にたっているなら嬉しいなと思います。
ということで、、、
テクノ法要を作った朝倉行宣さんは、「ふざけた坊主に見えるかもしれませんが、本気の取り組みです」とおっしゃられていました。さらに実際に始める前は「参拝者に受け入れられるのか、とても悩んでいた」そうです。しかもクラウドファンディングを始める前の時点でも、機材購入に約60万円を費やしていたとのこと。
しかしこんな高いハードルを乗り越えてでも、思い切って挑戦したからテクノ法要は生まれました。朝倉さんのチャレンジ精神やテクノ法要自体の完成度の高さは素晴らしいものがあります。ですが私はこれに加えて、ここ数年の間に起きている西本願寺の気風の変化も、大きな追い風になっていると感じるのです。
仮定でしかありませんが、もしも西本願寺が出る杭をやたらめったら叩く組織だったら、テクノ法要は生まれなかったかもしれません。私の知り合いのお坊さんで、テレビに出たら師匠から破門されたという方がいます。お寺は目立つだけで、周りと異なるだけで、気に食わないという人も多い社会です。
(そして非常に長い歴史がある分、伝統に裏打ちされた絶対的な正しさから攻撃する材料には事欠きません)
それが「すごいものがある」→「本山や各地のお寺でも呼んでやろう」という流れをバシバシ生み出しているのは、組織としての胆力です。そしてこれが「挑戦してもいいんだ」という安心感を生み、また次の出る杭が生まれる土壌になっています。
まさしく、黄金サイクルですね。
いろんな宗派の方とお付き合いのあるほーりーですが、日本最大宗派で僧侶数が多いことを差し引いても、新たなものを生み出す浄土真宗本願寺派のお坊さんが増えていると感じています。
そういえば、先日この住職にもお会いしましたし。
塩ファサー住職が、めちゃくちゃ話題になってますね。https://t.co/81mrdXL432
— ほーりー(寺社旅研究家) (@holy_traveler) 2017年7月26日
1万回以上リツイートされたこの写真。ネットでも賛否両論ありましたが、そもそもお焼香ってどういうもの? その作法は? という質問を多くの方がするきっかけにもなっています。こうしたお坊さんを総攻撃でつぶしていたら、後に残るのは世間の「仏教って怖い」という感情だけでしょう。
私は宗派問わず何人かのお坊さんから裏で、「宗派に所属していても意味がない」「離脱して単立になるつもり」なんて言葉も聞いています。しかも自分で道を切り開けるお坊さんほど、こういう言葉を述べています。
しかし今回のテクノ法要の流れに見るように、お坊さんの挑戦力を目に見える形で引き出す役割も本山(宗派組織)は作れるのではと、外部の身勝手な立場ながら思う次第です。