タブーは破っても怒られないという、ウルトラマンの木魚を作った仏壇職人の秘話に迫る!
先日、京都の龍岸寺で行われた仏壇ナイトにお邪魔してきました。
仏壇ナイトとは愛知県三河地方の仏壇職人にしてクリエイター集団『アートマンジャパン』を率いる都築数明さんが開催している、仏壇の前で日本の伝統工芸や趣味の戦国武将について、熱く語っちゃおうというイベント。今回は京都に出張です。
仏壇がどんどん売れなくなってきている現代だから、どうせ誰も買ってくれないならイベントの舞台に使ってしまおうという、なんだかすごいノリで始められています。
まあ、都築さんは常に他の追随を許さないノリと勢いで全方位に突き進む方ですが。しかし今回の仏壇ナイトを聞きに行って、改めて圧倒されました。
そんなわけで都築さんの挑戦の歴史。ロボット型仏壇とか、人が入れる仏壇とか、角の生えた仏壇とかいろいろ製作されています。そしてアートイベントなどで賞を受賞したりされますが、これが全く売れないとのこと。
ならばとニューヨークで個展を開くも誰も買ってくれず、翌年にドイツで個展を行い得た成果は飼い犬の名前がダンケ(ドイツ語でありがとう)になったことのみ。海外に仏壇を持っていっても、そのままでは売れないことが分かったという、まさに鉄砲玉のような生き様です。
しかし一方、三河に変な(悪評も含む)仏壇職人がいるという話題だけは着実に広まっていきます。そして出てきたのが、円谷プロ50周年イベントとして企画された、キャラクターの世界観をアーティストが自由に表現する企画「円谷プロ・クリエイティブ・ジャム50」に参加しないかというお話です。
しかし、こうしたキャラクタービジネスにとって宗教はタブーとなることが多いそうです。そのため壁を崩す何かを探したところ、ウルトラマンの第35話に怪獣たちを仏式で供養する化学特捜隊達の話があったとのこと。
これに着想を得て、怪獣を供養するためのウルトラ木魚を製作。ついでにウルトラマンのあの姿はもともと弥勒菩薩がモデルとなってデザインされたそうで、実はお寺とのつながりも深い。そんなわけで企画だけ作っても通らないだろうと、まずは勝手に木魚を作って送りつけたら採用されちゃったとのことでした。
そこからはあれよあれよという間に大ブレイク。怒られるのではないかと円谷プロも最初はひっそり扱っていたそうですが、世間のあまりの反響に今では目玉扱いにしてしまうほど。巨大なウルトラ木魚(税込108万円、しかも購入者あり)も誕生し、現在は神々しい銀色のウルトラ木魚(本当のウルトラマンそっくり!)も開発中。
なんというか、破竹の勢いですね。シュワッチ!
しかしそれにしても都築さんのノリはどこから来るのか。私は都築さんを見ていると、本当に子どもマインドを残した方だなと感じます。話の後半は都築さんが行っている東日本大震災の津波で流された位牌修復ボランティアの話に入っていきますが、身銭を切って位牌を直し、愛知県と東北を何度も往復しながら持ち主に返す日々。忙しい毎日をさらに忙しく送られています。
今回の仏壇ナイトもこのチャリティーイベントとして行われていましたが、都築さんは楽しいことも、目の前にあって見逃せないことも、全部向かっていかずにはいられないのでしょう。そして結びつくウルトラマン×供養=ウルトラ木魚。まさにこの発想は、あちこちと駆け回る都築さんならではです。
中でも一つ心に残ったのは「今の時代はタブーを破っても怒られない。むしろ受ける」という言葉でした。しかし破れるタブーを見つけるには相当の観察力が必要ですし、失敗も必ずあります。都築さんもいろんなタブーを破っては、なんだこの仏壇はと怒られていたようですし。
また、破っても悪ふざけにならない本気の熱意と、破った後の世界を歩く勇気と覚悟も必要です。私も第一回目の寺社コン企画を公開した時には、周りから何を言われるかめちゃくちゃドキドキしたのを覚えています。
都築さんで言えば、衰退していく伝統技術を救いたいという使命感と、供養という心の受け皿に光を当てたいという熱意。そうしたものが合わさった結果が、ウルトラ木魚なのでしょう。
いやー、ほんと。これこそアーティストの仕事ですね。フリースタイルな僧侶たち代表(&今回の会場となった龍岸寺住職)池口さんの木魚を叩く目の輝きようったら、ありませんでした。