檀家さんからのお布施以外で、お寺に収入を増やす5つの方策
先月開催された、浄土宗兵庫教区さんの研修会。講師として私が受けた依頼は「これからのお寺の存続策を話してほしい」というどストレートなものでした。
そこでお坊さん達にお伝えさせて頂いたのは、石垣型のお寺構築というものです。詳細は以下で述べさせていただきましたので、よろしければぜひどうぞ。
読むのが面倒くさいよ~という方のために、3行でまとめると
○檀家さんからのお布施は、お寺社会の収入全体の80%を占めている
○人口減少時代において、柱が一本しかないと不安定になりやすい
○大きなものから小さなものまで、収入&布教を両輪で回す様々な方策が必要
というものです。
何度でも言いますが、檀家さんはとても大切な存在です。ですが檀家さんのお布施だけにお寺の経済基盤が集中すると、これからの社会においては檀家さんの負担も天井知らずで増えることにつながります。
そこでいろんなパーツを組み合わせてお寺社会(あるいは個々のお寺)を成り立たせようというのがほーりーの提案で、石の組み合わせで強固となるお城の石垣になぞらえ、これを石垣型モデルと名付けました。
そこで今回は何人かの方から詳細教えろってメッセージが来ていたので、この研修会で紹介させて頂いたほーりーの回りで有望視されている石垣のパーツとなり得る方策をまとめてみました。
檀家さんからのお布施以外で、お寺に収入を増やす方策
(1)宿坊
ほーりーのメインテーマ『宿坊』。全国寺社観光協会の宿坊創生プロジェクトや、その他の会社でも幾つか宿坊を作る事業が立ち上がり、2017年はこれまで減少を続けていた宿坊数が反転した年でした。まさに宿坊元年。
そして2018年には民泊解禁が予定され、お寺が宿坊を開くのに弾みとなりそうな社会機運が整ってきています。
ほーりーが考える宿坊開業のメリットは以下の3つ。
○土地と建物で数千万円以上かかる旅館やペンションと比べ、開業コストが安い
○宿坊が一軒もない県も多いなど、競合が少なく集客に有利
○「観光立国」「過疎」「自死者対策」「廃寺社の活用」「災害時の避難施設」など、社会問題に寄与する
というものです。
講演では埼玉県の大陽寺と鳥取県の光澤寺を事例に、宿坊のサクセスストーリーも紹介させて頂きました。こうした宿坊が日本各地に生まれていったら、私はお寺はもっと身近になると考えています。
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(2)仏前結婚式
日本で行われている結婚式のうち、仏前式は0.7%と言われています。これは計算すると年間3136組で、一年間に結婚する僧侶の人数とほぼ同数です。ようするに、お坊さんしか仏前式は行っていないということですね。
仏前結婚式を取り巻く課題は
○お寺で式を挙げられることが、そもそも知られていない
○お寺で結婚式を挙げる体制が整っていない
○お寺は慶事に向かないと思われている
○お寺での挙式は手作りになるため、晴れ舞台で失敗のリスクが大きい
というものがあります。
しかし現在は結婚式のトレンドとして
○オリジナルウェディングのあこがれ
○手作りウェディング情報の充実
○和装のブーム
○お寺=お葬式のイメージが薄れてきている
という追い風も出ています。
仏前結婚式は宗教法人の仕組み的にも始めやすく、社会でのお寺のあり方自体を変革する可能性に満ちています。そして神社では年間数百件と挙式を行い収入の柱としているところもありますが、お寺でも同じことは不可能ではないと考えています。
実際にお寺で結婚式を挙げたほーりーも、人生の中で大きな意味を持った一日になりました。周りで仏前結婚式を挙げた方にアンケートを取っても良かったという意見が多く、これは広めるべきと感じています。
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(3)企業セミナー
人口減少と残業削減により、日本の総労働時間は減少します。また働きやすい環境を整えることは企業の社会的責務であり、怠ることはブラック企業と認定されたり社員のうつ病による長期離職・退職など経営リスクにもなってきています。
そこで現在、社員のスキルアップやメンタルケアの重要性が増し、企業セミナーは成長産業になってきました。
ほーりーはお坊さんがマインドフルネスで企業研修講師を務めるインナーコーリングとも定期的にミーティングしていますが、こちらには大手企業などから研修依頼や問い合わせが相次いでいます。
企業が予算を取って研修を受け入れるには、2つの要素が必要です。
○研修を受けることで、収益が上がること
○それが数字(エビデンス)で示されること
企業研修は一人数万円するものも多くあります。マインドフルネスに限りませんが明確に価値を示せば、そこに僧侶が入ることは可能です。
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(4)信徒創造
信徒創造なんて言うと何やら無駄に壮大なタイトルになった気もしますが、お寺社会の大きな欠点としてライトな入り口とコアな支援者が断絶されていることを感じます。
「イベントを開いても、檀家が増えるわけじゃない」という言葉は何度も聞きましたが、この点を真剣に精査していくべきというのがほーりーの意見です。
そこでほーりーが顧問を務める霊園会社・アンカレッジでは、お寺が人でにぎわうことでお墓見学者にも好印象を持って頂き、お墓が売れやすくなることでお寺を支える仕組みを構築しています。
アンカレッジの樹木葬墓は宗旨不問で販売していますが、お墓見学者の5割が実際に購入まで至り、またお墓を購入された方の8割はそのお寺で葬儀・法要を依頼されています。
お墓購入が檀家(と、同等レベルの)関係を結ぶ入り口となる。こうした新しい形の信徒さん的な存在は、これからのお寺サポーターとしても大きな力になります。
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(5)祈願・祈祷寺化
ほーりーがこれからのモデルとして大きく注目しているお寺に、千葉県にある本光寺と長福寿寺があります。
本光寺は千葉県市川市にあるお寺で、見た目は何の変哲もない町の小さなお寺です。しかしここはYou Tubeで60万回以上再生された動画CMで有名になり、日本中から参拝者が足を運ぶお寺になっています。
○仏教を貶める表現は避ける
○伝えたい想いを語る
このバランスを踏み込んで追求しながら「お寺は笑顔になれる場所」というメッセージを訴えたことで、動画は爆発的に広まり、ご祈願の依頼も増えてお布施は5倍になりました。
一方、長福寿寺は長南町という千葉県の公式サイトにも載る、筋金入りの過疎の町にあります。国宝や重文指定の文化財があるわけでもなく、黙っていても人が来るような有名観光地からも遠く離れた、条件面だけで見れば平均以上に厳しいお寺です。
しかし護摩の炎に象が舞い降りた伝説をモチーフに本堂の前にゾウの像(吉ゾウくん)が建立され、金運UPを前面に掲げたお寺作りにより、年間3000人だった参拝者が年間15万人にまで爆増しました。
そしてこのお寺のすごさは檀家さんから護持費を頂いておらず、一時的な葬儀を合わせても収入全体の8%に留まることです。長福寿寺の経済はお守り・ご祈願・人形供養によって成り立ち、多くの人がお参りに来ることで長南町自体の地域活性も担う存在になっています。
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ということで、、、
結論的な話をすれば、ほーりーはお寺社会にお金を稼ぐマインドをもっと持ってほしいと考えています。その一方で社会には、お寺がお金を稼ぐことに寛容であってほしいとも思っています。
これは合わせ鏡みたいなもので、どちらか片方だけが変わろうとしても難しいものです。
そしてその結果が檀家さんからのお布施が8割という極端な収入構成になったり、お寺がやることなすこと無償のボランティアとして求められたり、さらには追い詰められたお坊さんが離檀料〇百万円と法外な要求をして世間を騒がせたりという状況になっています。
この辺は以下の記事の繰り返しなので、あえてだらだら書きませんが。
どちらにせよ、これからお寺はどんどん失われ、放置されて消えていきます。お寺大好きなほーりーにとってそれはとても悲しいことなので、ひとつでもふたつでも次世代につながるようにお寺とお金についてもあれこれ発信していきます。