133年無住のお寺に入った、天明寺住職の挑戦
先日、群馬県前橋市にある天明寺に出かけてきました。こちらは白菜で有名なお寺です。12月の第2土曜日は白菜加持が行われており、この機会にお参りしてみましたよ。
お寺に着くと、井上裕径さんによるマジック説法が行われていたり。
300株の白菜が積み上げて並んでいたり。
そして山伏さんが登場し、迫力の柴燈護摩が行われました。
その後、火渡りが行われたので、ほーりーも灼熱の炎に足を踏み入れてきましたよ!(嘘です。参拝者が歩く時は、危なくないように歩く部分の火が抑えられていました)
境内には多くの方が来られていて、甘酒の無料接待や地元野菜の直売所なども設置され、盛り上がっておりました。
133年無住のお寺に入った、天明寺住職の挑戦
それでまあ、ほーりー的にはこれだけでも大満足なのですが、寺社旅研究家としてこのお寺に来たのにはもう一つの理由があります。それはこの天明寺が133年もの間、お坊さんがいない(いわゆる無住)状態だったことです。
そこに2004年から鈴木辨望住職が入られました。天明寺のある前橋市は群馬県の県庁所在地とは言え、隣にある高崎市よりも人口と経済規模では小スケールな地方都市。そして天明寺自体は畑に囲まれて駅や商業施設からも距離のある、外部から人を呼び込むことの難しい立地です。
無住時代のお寺は檀家さんが管理されていましたが、その数は26軒でした。そして鈴木住職が最初に挨拶に行った時も、「こんなとこ、来ない方がいいよ」と言われたそうで、その環境の厳しさがうかがえます。100年以上もお坊さんがいなかったことには、それだけの理由があるわけです。
しかし「周りがやらないことをやろう」と考えた、鈴木住職のお寺作りが始まりました。
群馬はある意味で、強烈なマイナスを引き寄せる地域でもあります。都心部から榛名山や赤城山に自殺に来る方もいて、葬儀屋さんからは切実な場面でお坊さんが求められることが少なくありません。
また故人をしっかりしたお墓に埋葬したいけど、受け入れ先が見つからない。都心部ではそんなお墓難民も多くいます。天明寺ではそうした方に向けたお骨預かりも行い、多くの方とのつながりが生まれました。
こうした話は、時にお寺社会で反感を買うことがあります。しかし世の中には人生や制度の狭間で苦しんでいる人、困っている人がたくさんいる。そんな方に手を差し伸べて受け皿となることが鈴木住職の目標であり、これが天明寺自体を成り立たせた要因でもありました。
檀家さんも10年ちょっとで200軒にまで増え、お寺の経済基盤も少しずつ安定していきます。本堂や庫裏が整備され、飛び地を取得して2013年には護摩堂が、2017年には聖天堂や駐車場も作られました。
現在は樹木葬による永代供養墓も準備されているとのこと。しかもまだ完成していないのに、すでに5件ほどお申し込みが来ているのだとか。
年々、お寺に新しい要素が増えていく。このお寺に初めてほーりーが来た時(実は2か月前にも来ていました)、ここが100年以上も誰もいないお寺だったとは信じられませんでした。
白菜のお寺として、地元で名を知られた存在に
白菜加持のお手伝いをされていた住職の元同級生の方とお話する機会もあったのですが、鈴木住職から「あそこのお寺に入ることになった」と聞いたとき、「そもそもそんなところに、お寺なんてあったっけ?」と首をひねる状態だったそうです。
地元の人すら存在を知らなかった天明寺ですが、今や様々な方が集うお寺になっています。白菜加持も初年度は5人しかいなかったそうですが、6年経って300人以上が集まる法要に発展しました。
白菜は中国では縁起の良い野菜とされています。台湾にある故宮博物院では、白菜の彫刻(翠玉白菜)が三大至宝の一つに数えられているほどです。
そして群馬には、榛名山の火山灰が堆積してできた肥沃な大地が生んだ『国府白菜』があります。鈴木住職のご親戚にこの白菜を作られている方がいたこともあり、お寺で健康を祈願する白菜加持が行われるようになりました。
さらに天明寺ではこの「白菜加持」を商標登録し、今後はさらにこの白菜を柱にしたお寺作りを考えられているそうです。
天明寺ブランドの漬物を作れないかと地元企業に相談したり、白菜のお不動様をキャラクター化するなど、これからの展開が楽しみなお話もいくつかお聞きしました。
この地元の食産業×お寺の組み合わせは、先日に大阪で精進ソースを開発した泰聖寺でもお聞きしましたが、群馬の白菜をお寺が発信して地元が潤い、それが仏教にも還元される流れが作れたら面白いことになりそうですね。
参考:精進ソースのご祈祷で、泰聖寺にはいくらお金が入るのか?
全国の白菜産地と連携したり、白菜研究家と手を組んだり、白菜図書館を作ったり、白菜レシピや健康効果を語りながらブランドアップも図っていく。
そして白菜法話を語るとか、白菜精進料理を開発するなど。最終的には白菜をテーマにお寺が様々な社会問題解決に取り組み、住職の歩む仏道をストーリー化していったら、もはや日本に唯一無二の白菜寺になります。
日本中のお寺を回っているほーりーですが、白菜に特化したお寺はあまり聞いたことがないですしね~。大根とかかぼちゃとかだと、ちょっと競争率高そうですが。
白菜寺はこれからどんどん、パワーアップしていきますよ!
ということで、、、
今回はほーりーが顧問を務めるインナーコーリングの水野社長&相棒の政岡さんと、一緒に出かけてきました。白菜加持はお参りに行くと一人ずつ無料で白菜がもらえてしまうという超お得イベントでもあるので、おいしそうな肉厚の白菜を抱えてみんなでめちゃくちゃテンション上がってしまいましたよ。
見よ、この絵面的に明らかに邪魔な何かがいる写真を。
そしてほーりー家では早速、白菜を鍋で頂きました。いやー、甘みがあってものすごくおいしいです。量もたっぷりあるので、これからしばらく白菜三昧です。