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信仰だけを語ろうとしても、身延山の信仰は伝わらない

先日から書いている身延山の記事が、想像以上の波及を続けています。

日蓮宗はいい加減、身延山の観光ガイドを作ろうよ

身延山はなぜ動かないのか。久遠寺に長年勤めた僧侶の考察

知り合いのお坊さんの話では、日蓮宗宗務院(日蓮宗の中央組織)の重役会議的なところにまで「堀内がこんなこと言ってるよ」と報告されたようです。そして今度、私のところに身延山について直接お話を聞きにきたいと、ご連絡も頂きました。

身延山では話題になっていないと思うので、具体的な動きにつながるかは分かりませんが(「なんだ、あの生意気なやつは」と反発されていたりして)、私も身延山は大好きですし、新たな動きが起こることを期待して、今回はまた身延山について感じることをまとめました。

信仰だけを語ろうとしても、身延山の信仰は伝わらない

今回のテーマは身延山の多様性。

言うまでもない事ですが、日蓮宗にとって身延山はとてつもなく大切な場所です。総本山ですし、日蓮聖人が「自分が死んだら身延に埋葬してほしい」と遺言し、そのお言葉通りに眠られている地でもあります。

お坊さん達から見れば、聖域中の聖域。そこを信仰以外の目で見るなんて、考えられないことかもしれません。

ですが私から見れば、身延山にとって「信仰」は魅力の一部ではあっても、すべてではありません。そしてお寺に行きまくっているわけではないもっと一般の人の目からすれば、「信仰」なんて目の端にも入らないものです。

この時、道は2つあります。「信仰」以外の目で見る人を排除する道と、信仰以外から来た人を信仰に導く道。

この2つの道に対する私の考えは、以下をご覧下さい。

お寺・神社には信仰心を持ってから入れという不可解な意見

簡単に要約すると

・信仰心がないとダメだというお坊さんの要求レベルは、たいてい本職を基準にしている。
・信仰心は持ってから寺社に入るのではなく、入ってからでないと育みようがない。
・お寺に来る人が最初からマックスパワーを求められるなら、お坊さんのいる意味はない。

というものです。

そして私は、身延山の素晴らしさには多様性があると考えています。そしてその多様性はどれも身延山が本来大切にしているものへと、結びつけやすいものです。

身延山の魅力の多様性

信仰目線を横に置いて身延山を歩くと、実は信仰につながりそうなキーワードがたくさんあります。例えばということで、3つ紹介します。

親を思う場所「思親閣」

身延山久遠寺思親閣

身延山久遠寺の奥の院には、「思親閣」という場所があります。ここは名前の通り、日蓮聖人が身延山へとたびたび登り、両親の追善のために故郷(千葉県)を拝された場所です。

これを信仰目線で語れば、上の説明そのままで日蓮聖人が祈った霊蹟です。なので信仰を持った人には涙が出るほどありがたい場所です。しかし日蓮聖人なんて歴史の教科書に出てきたなくらいの人には、何も心に響きません。

そこで、少し思考実験。ちょっと拡大解釈して「親に感謝するための場所」「親孝行のきっかけにする場所」と意味づけしたら、どうなるでしょうか。きっと身延山にお参りする価値が、来た人にとってはぐぐっと増すでしょう。

中には故郷から遠く離れた身延山で日蓮聖人がなぜ両親に祈っていたのか、この身延の地で何をしていたかに興味を持つ人も出るはずです。「自分の親への感謝」が日蓮聖人への共感になり、そこから(何段階もステップを経る必要はありますが)、法華経自体に興味を持つ人も出てきます。

久遠寺でも「母への手紙」募集企画が行われていますが、あくまでも信仰が全面なんですよね。

身延山の母への手紙

コンセプトは良いと思うのですが、

「孝と申すは高なり天高けれども孝より高からず~」

「父母の墓をも見よかしと深く思う故に、今に生国へはいたらねどもさすがに恋しくて~」

「ご両親への感謝を「手紙」に託す淨行は「知恩報恩」の法華経信仰の在り方に具足します」

って、この説明文はさすがに初心者には近寄りがたいです。ネタにしてしまい、申し訳ないですが。

まあ、この文章がすんなり入る人しか、対象としていないのかもしれません(そしてそれが悪いということでもありません)。ただ、それなら他に一般の人向けとして、現地でワンコインでできる親の健康祈願とか、近くの温泉街と協力した両親招待ツアーとか、お坊さんがめちゃくちゃ演出してくれるサプライズ親孝行とか、ライトな味の企画も増やしてよいのではないでしょうか。

女性の聖地・身延山

身延山久遠寺参拝

身延山は「女性」をキーワードにすることもできます。信仰ではなく歴史で見ると、身延山には女性のキーパーソンが多いことも目につきます。

例えば豊臣秀吉の姉・瑞龍院、前田利家側室・寿福院、徳川家康側室・養珠院(お万の方)など、多くの女性が身延山に建物を寄進しています。

日本が誇る名城・姫路城に入った酒井家も明治に入ってからですが、旧姫路藩主酒井公の夫人・顕寿院が日蓮聖人が9年間過ごした御草庵跡の玉垣や、久遠寺そばにある清兮寺の本堂なども寄進されました。

他にもお百度参りの願を立て、150回の身延山参詣を果たした永田紀美像などもあります。こちらは息子で映画会社大映社長・永田雅一氏が建立したもので、上の親孝行と絡めることも可能です。

また歴史からは外れますがそもそもとして、身延山を守護する七面大明神も女神です。これらをさらっと並べると、女性がお参りする聖地という意味も強く印象付けることができます(あくまで、さらっと)。

で、ほーりー的に注目したいのは、大奥との関係です。身延山に限りませんが、江戸時代には徳川家の大奥で日蓮宗は熱烈に信仰されていました。

徳川家と言えば、菩提寺は浄土宗・増上寺。そして増上寺と並んで将軍のお墓が作られた天台宗・寛永寺への信仰でも有名です。しかし過激な信仰から幕府に敵視・弾圧されることも少なくなかった日蓮宗が、大奥では人気があった。これはあまり語られることがありませんが、現代の人間には興味を引く題材です。

お万の方が「女人成仏を説く法華行者守護の山に女人が登れないのは誤りだ」と訴えて、女人禁制だった七面山へ登詣したのも強烈なエピソードですし。

こうしたマニアックなものから縁結びやパワースポット、湯葉による美容と健康など、硬軟織り交ぜて深めていくと、女性の聖地となっていきます。身延に「ガール」を付ければ良いじゃん的な話だけでは、さすがにもう間に合いません。

厳しく豊かな自然から身延山を見る

身延山展望台

身延山は自然の宝庫です。春の桜、夏のミズキ、秋の紅葉、冬の南天など、四季折々の草花が楽しめます。身延山の山頂からは日本高峰ランキング1位の富士山を始め、2位の北岳、3位タイの間ノ岳、6位の悪沢岳が眺められます。春と秋に富士山頂から日が昇るダイヤモンド富士も有名です。

また環境省のレッドデータブックで絶滅危惧種に指定されるブッポウソウは、今年に入って久遠寺周辺で約20年ぶりに繁殖が確認されました。

渡り鳥のブッポウソウの繁殖の痕跡とみられる卵の殻が、繁殖地として国の天然記念物に指定されている身延町の身延山久遠寺周辺で約20年ぶりに確認され、卵の殻などが同町常葉の下部地区公民館で展示されている。

そして樹齢300年以上の大木が並ぶ千本杉や近くに湧く温泉などもありますし、身延山やその周辺では様々な形で自然を楽しむことが可能です。

しかしこれも日蓮聖人の言葉では、「春咲く花が夏に開き、秋になる果実が冬にならないと実を結ばない。狼や猿、鹿の声が山に響き、蝉がうるさく鳴き続ける」と表現されています。

自然豊かな身延山を楽しみながら、ふっと日蓮聖人の言葉にふれる。その時に感じることも、きっとあるでしょう。

こうしたものは身延山で五感を使って体験しないと、どんなに信仰だけを強調しても心には残らないのです。

ということで、、、

身延山には他にも、「芸能関係と接点が多い」「狐の伝説が多い」「健康祈願のご利益スポットが多い」という風に、横串でテーマを作れるものがたくさんあります。私はそんなテーマを30個くらい見つけていますよ。

キーワードはあくまで多様性です。信仰を否定するつもりはないですし、むしろそれはものすごく大切です。しかし信仰以外の切り口も増やしていくことが、信仰の魅力を伝えることにもつながります。

私なんて法華経を写経したら、結婚相手と出会っちゃったくらいですしね(寺社コンで日蓮宗のお寺で写経した時、相手と出会っています。そしてそのお寺で結婚式も挙げちゃっています)。

身延山は他宗派の本山と比べても、信仰以外で語ることが極端にはばかられている。それが私の印象です。日蓮宗はもうちょっと、多様性にスポットを当ててみるのはいかがでしょうか?

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