他人の行動を儲かるかだけで言及する人が多すぎる件
先日、キングコングの西野亮廣さんが、大ヒット絵本『えんとつ町のプペル』をWeb上で無料公開しました。
それでこの無料化がネットで大激論となっているわけですが、大まかに分けると
○無料で公開したら、他のクリエイターの仕事が適正に評価されなくなるじゃないか
○無料公開は時代の流れ。クリエイターには戦略が必要だ
という2点のぶつかり合いです。
まあ、状況的にはこのツイートが、私には一番分かりやすかったです。その意味では私の立場は後者派。
例のキンコン西野氏への批判って、大げさに言うと、BeckyとかEudoraみたいなメーラーをシコシコとシェアウェアで売ってた専業プログラマーが、Googleに対して「Gmailみたいなものを出すと、ボクチンが食えなくなるじゃないかっ!」って怒ってる構図みたいに見えてくるんだが。
— 田端 信太郎 (@tabbata) 2017年1月22日
他人の行動を儲かるかだけで言及する人が多すぎる件
まあ、そんな無料公開の是非はおいといて。ここでほーりーが違和感を覚えるのは、
○無料で公開 → クリエイターが食えなくなる
○無料で公開 → 西野さんは無料公開することで、もっと儲けることができる
という「儲かる」「儲からない」だけで言及されている点です。
特に後者は「お金のない子供にも届けたい」という西野さんの言葉も、「その方が儲かるからからだよね」と、自分の尺度に落とし込んで行動を理解しています。
無料公開したことで儲けたクリエイターはたくさんいます。最近だと『ブラックジャックによろしく』を二次利用までフリーで無料公開した佐藤秀峰さんが有名ですね。
他にも以下の記事は、「ワンパンマン」や「ReLIFE」「女帝」「「ドラゴン桜」で知られる三田紀房さんの作品群」など、様々な無料化事例を取り上げています。
キンコン西野氏が火種 「コンテンツ無料化は、作家を殺す」のか? マンガを例に考える
こうした例は他の業界でもたくさんありますね。写真もブログで使えるフリー素材はたくさん出回っていますし、ポケモンGOも無課金ユーザーが不利にならずに遊べるゲームバランスは称賛されています。
なので西野さんの念頭にも、無料公開すればお金がもっと入ることは想定のうちにあったでしょう。むしろ、なかったらびっくりです(そして、実際にAmazonで『えんとつ町のプペル』が売上1位に上がっていました)。
が、それはそれとして、お金がない子供にも読んでほしいという純粋な気持ちも、ないはずがないんです。「無料にした方が儲かるから」と「子供にも読んでほしい」は両立します。というか、なんでこの2つが両立しないものとして扱われてしまうのかが、ほーりーには分からないところです。
まあ、西野さんが『お金の奴隷解放宣言。』なんて挑発的なタイトルで、この構図を意識的に煽っている点もあるでしょうが。
儲かるかだけで他人を理解する人は、寺社界隈にも多い
そして、今回言いたいこと。こうした儲かるかだけで他人の行動原理を理解(&批判)しようとする人は、寺社界隈にも多いなと思っています。私の活動から言えば、いよいよ今年の4月にオープン予定で大阪に建設中の宿坊ですね。
外国人がどんどん旅行に来ていてホテル不足が深刻な大阪に、日本の文化を感じられる宿が出来れば低リスクで集客できます。
この宿坊は一泊2万円からと価格もけっして安くありませんし、ファンドを組んで5~10億円を調達するなど、ビジネスロジックも幅を利かせています。
が、それを持って、単なるインバウンドバブルに乗った金儲け手段と見るのは早計です。もちろん金儲けは大切ですが、同じくらいにお寺や仏教を伝える場にしていきたいという想いがこの『宿坊創生プロジェクト』にはあります。
そうでなかったとしたら、わざわざ18年間宿坊を研究していたものの、既存の旅館ビジネスノウハウは皆無の私を顧問に据えるはずがありません。
Amazonのお坊さん便とか、郵便による送骨とかでも感じますが、お金でしか他人の行動を判断できない人って、自分の行動理念がお金だけしかないからなんですよ。
繰り返しになりますが「儲からなくてもやる」ことだけが、純粋な行為ではありません。「儲かるからやる」ことに、「儲かる以外に意味を見い出さずにやる」なんて、むしろそっちのほうが難しいことです。そんなのほとんど、犯罪行為くらいじゃないでしょうか。
キンコン西野さんの話に戻れば、山本一郎さんのツイートが、この辺のおかしな空気を抉り出してくれていますね。
キングコング西野周辺の風評は、ビジネスモデルや西野本人の態度の話に終始して、絵本の中身は誰も語らないという点で逆に絵本界隈の焼き畑化を示してるような気はする。
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2017年1月22日