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キャッシュレスお賽銭はメリット多いが、新たな詐欺には気をつけたい

増上寺

 昨年末、お坊さんや神主さんの間で一つのニュースが話題になりました。それはPayPayがお賽銭でも使えるようになったというものです。

 実際にこのニュースをfacebookで伝えたところ、これまでもすでにやっていたところはあるよというコメントを頂きました。ただこれまでPayPayなどのQRコード決済では、対価を伴わない寄付行為は禁止されていました(なのでやっていたところは、本来はNGでした)。

 正確にはみずほ銀行系のJ-Coin Payだけは使うことができました。が、こちらは正直に言って、かなりマイナーな存在です。ほーりーもお賽銭で使えると聞いてスマホに入れていますが、使用できる場面は限られていました。

 それがここにきて、PayPayの登場です。言わずと知れたQR決済のトップブランドですし、日常的に利用されている方も少なくないでしょう。報道によればPayPayで収めるお賽銭が非課税として認められたともあり、寺社のキャッシュレスは新しいステージに入る予感がします。

 ちなみに東京の浄土宗大本山・増上寺では、2024年12月23日に導入が始まったとのこと。なんてことだ。ほーりーは12月20日に増上寺をお参りしていたのに、数日の差で見ることができませんでした。

 だいぶ昔に愛宕神社で楽天エディでお賽銭が入れられると聞いて急いで出かけてみたものの、神社の方から「あれは一日限定なんですよ」と言われた時以来の衝撃です。

 まあ、それはともかく。今回はお賽銭キャッシュレスが広がることで、寺社にどんな変化が起こるかを予想してみます。

キャッシュレスお賽銭の普及によって予想される5つの方向性

お賽銭を入れる人数と金額が増える

 まずはシンプルに言って、お賽銭が増えると考えられます。ほーりーも寺社巡りが続くと財布から小銭がなくなり、手だけ合わせて終わりにしてしまうことがよくあります(毎回1000円札を入れる度胸はさすがにないので、、、)。

 キャッシュレスが普及する中でお金を崩す場面は減りましたし、財布すら持ち歩かない方もいます。そんな方でもお賽銭を入れられるようになれば、単純に額が増えると考えられます(お賽銭箱がなくなるわけではないので、現金派の方が入れられなくなるわけでもありませんし)。

 また語呂合わせもしやすくなります。「15円(良いご縁)」とか「25円(二重にご縁)」「777円(ラッキーセブン)」など、これまでわざわざ小銭を用意しておかないとできないお賽銭額が入れやすくなりました。下世話な話ですが、お賽銭の単価アップにもつながる気がします。

 またこのPayPayお賽銭を導入した増上寺では、お賽銭を入れると専用イラスト(全5種)がランダムで表示されるそうです。こうした新たな遊び心ある仕組みが増えれば、お賽銭に興味を持つ方が増えるかもしれません。

 そして「PayPay」と「Alipay」はサービス連携しているので、中国からの参拝客もお賽銭が入れられるようになります。インバウンド対応という意味でもキャッシュレスは重要です。

手間と手数料が減る

 2022年にゆうちょ銀行が硬貨の取扱いを有料化した時には、寺社界に激震が走りました。特にお賽銭は少額が多いので、銀行に預けたら手数料だけで消えてしまったと嘆く声も聞こえます。

 実際にこの話題が出た時には、こんな記事を書いていました。

ゆうちょ銀行の硬貨手数料有料化には、長福寿寺モデルが役に立つ

長福寿寺のお賽銭注意書き

 ただこれがPayPayになると、手数料自体がカットできます。ちなみにネットの記事によるとPayPayへの決済手数料は発生しないが、法人向けのPayPayビジネスアカウントの手数料は寺院側が負担する仕組みになるとのことです。

 また増上寺クラスとは言わずとも、街のお寺や神社でもお賽銭を数えるのは手間がかかります。私も知り合いの住職に硬貨を入れると種類別に自動で振り分けてくれる機械を見せて頂いたことがありますが、それでもジャラジャラと入れては出しての繰り返しが必要です。

 キャッシュレスはこうした手間を、まるごと省くことができます。実際に導入する上で、これが一番のメリットというところも少なくないのではないでしょうか。

賽銭泥棒は減るが、別の詐欺は増えるかも

 お賽銭をキャッシュレス化すると、お賽銭を盗むことができなくなりセキュリティが高まります! という意見をよく見ます(実際にPayPayのプレスリリースにも書いてありました)。

 これはたしかにそうだろうと思う一方で、ほーりー的には別の詐欺が増えるかもという危惧があります。

 それは本来のQRコードの上に別のQRコードを貼られて、お賽銭をまるごと別の場所に抜き取られたり、悪意あるサイトなどへ誘導されたりと言ったケースです。

 特にこれからお賽銭キャッシュレスが広まって、無人のお堂にまで普及した場合、人の目が入らないことを良いことに、やりたい放題されてしまう可能性があります。

 またそのお寺はキャッシュレスお賽銭に対応していなくても、賽銭箱の上に勝手にQRコードを貼られてしまうケースもあるでしょう。お店であればすぐにばれますが、対価を伴わないお賽銭だからこそ判明が遅れることは考えられます。

 他にもQRコードは送金だけでなく割となんでもできる技術なので、これから思いもよらない犯罪が起きることには注意が必要です。技術情報をチェックしていて一番怖いと思ったのは、東海大学が発表した遠くから不可視のレーザー光を照射して、QRコードを一時的に偽装したものに変える方法です。

QRコードにレーザーを当てて「偽装QRコード」に変える攻撃 悪性サイトに誘導 東海大が発表

 まだこれが犯罪に使われたというニュースは(私の見ている限りでは)ありませんが、こんなの本気でやられたら防ぎきれるかというレベルでゾッとしました。

お布施キャッシュレスも(いずれ)増えていく

 今回のPayPayお賽銭は、2024年8月から寄付団体や寄付サービスを運営する企業がPayPayの法人向けビジネスアカウントを作り、寄付を募ることができるようになった延長上で実現しています。

 そう考えると、お布施のキャッシュレス化もいずれ普及していくと考えられます。実際に多額の現金を封筒に入れて手渡しというのは、渡す側からすれば無くさないかや変なすれ違いが起きてトラブルにならないかといった心配があります。領収書すらないというのは、本来はよほどの信頼関係が築けていなければできないことです。

 また新札を用意したり封筒の書き方を調べたりなどは、慣れていないととても手間がかかります。封筒も冠婚葬祭用で様々な種類がありますし、筆ペンだって普段は使わないので太さはこれで大丈夫かとか試し書きのできない売り場で不安になります。

 親のお葬式をやり慣れているなんて人は人類にはほとんどいませんし、お寺や神社を大切に思うほど、間違えちゃいけないと緊張するものです。そこが見慣れたキャッシュレスであれば、一つの安心にもつながるでしょう。

遠隔お賽銭が増える、、、かも?

 これは規約上はちょっとわかりませんが、お賽銭という形なのか、お布施という形なのかは別として、遠隔地からの投げ銭的なものも出てくる気がします。

 毎日の法要や朝拝などをライブ配信している寺社もありますが、そこにパソコンの前からお賽銭を入れられたら、ちょっと新鮮な気持ちになりますね。

と、いうことで、、、

 ほーりーは以前、寺社で使える技術情報の勉強会『テクノロ寺』グループで、お坊さんたちとキャッシュレス勉強会を開いていました。

お寺のキャッシュレスセミナーを開催しました

 キャッシュレスは消費者、事業者、公的機関それぞれにメリットがあり、国策としても推進されています。

 またお賽銭のキャッシュレス化については、いろんな世論調査も調べましたが、世間はお賽銭のキャッシュレス化について、かなり好意的に見ているようです。

お賽銭キャッシュレス化への賛否を5つのアンケートからまとめました

 上記の内容を簡単にまとめると、賛否を問う5つの調査で4つが賛成派優位、1つが否定派優位でした。これは3年前にまとめた記事なので、現在はさらに理解が深まっていると考えられます。

 ということで、ほーりーの結論としてはキャッシュレスお賽銭はこれからもっと広がるし、広がった方が参拝者にも寺社にもメリットが多いというものです。ただしこれまでとは別の形で詐欺が広がる可能性があるので、そこには注意が必要だろうと考えています。

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