手元供養が広がる可能性を、各種アンケートからまとめてみました
いろんなお坊さんたちと一緒に語り合うfacebookグループ『ほーりーのお墓勉強会』。こちらでここ数日、話題にしているのは手元供養です。
聞き慣れない方のために説明しておくと、これはお骨を自宅に安置したり、アクセサリーに加工して身に付ける供養スタイルです。
ほーりーがこんな方法もあるんだと知ったのは、確か第一回目のエンディング産業展(2015年)でした(と、思って過去の写真を漁ったら、ありました)。
ご遺骨からダイヤモンド。当時はなかなかアグレッシブだな~と、思ったものです。ただ自分自身が死んだ後に宝石になりたいかと聞かれれば、微妙だなというのが正直な感想でした。
それから5年が経ち、エンディング産業展にも手元供養はずいぶん増えました。それを伝えたのが、先日の下記レポートです。
手元供養は大きく二つに分かれます。一つは先に紹介したアクセサリー形式。指輪やペンダント、ブレスレットなど、身に付ける系の商品です。
一方で自宅に設置する骨壺やお骨が納められる仏壇・ご位牌形式、石のお墓を小さくした宅墓もあります。
下の写真は2020年のエンディング産業展で展示されていたものですが、中の構造を撮影させて頂きました。金色のミニ骨壺に、お骨を納めることが可能です。
手元供養はこれから広がるか?
手元供養のシェア率に関するデータは少ないですが、手元供養協会会長の山崎譲二氏の調査から手元供養製品の販売数/年間死者数で計算すると、普及率は2.13%(2011年)とのことです。
ただしこれはペットに用いられたものもあるでしょうし、古いデータでなのでそこから業界が伸びたこともあるかもしれません。それらを考慮すれば、上にも下にもブレる可能性はあります。それでも実感値として手元供養のシェア率は、現在も同程度ではと思います。
一方で潜在的なニーズはどの程度なのか。これはリセット愛知さんの調査に、手掛かりがありました。
代々のお墓を所持している20代~60代の男女150名を対象に行われたアンケートの中で、「あなたが亡くなったらどのように埋葬されたいですか?」という質問に対して、「家族の家に置いてほしい」という回答が5%となっていました。
むむ。お墓がすでにある方でも5%は手元供養的なものを求められているというのは、意外と多い気がします。
また、他にも似たような調査では、弔いスタイルさんのものがあります。
こちらは上記と逆に亡くなられた方を弔う側への質問で、「ご自身の身近な人が亡くなった場合 手元供養をしたいと思いますか?」という問いに、16.7%が手元供養をしたいと回答しています。
一方で手元供養に、心情的な抵抗を持つ方もいるでしょう。これを調査したのが、メモリアルアートの大野屋さんです。
「自分自身の大切な人が亡くなった時に、遺骨などをペンダントや小さな容器に納めて身近に持っておくことに抵抗がありますか?」という質問に対して、「抵抗がない」と答えた方は61%に上りました。
なお、年代別にも集計されていましたが、以下の通りです。年配者よりは若い人の方が抵抗が少ない傾向が見てとれます。
ちなみにこれらはどれも、手元供養を推進する立場の方が調査したアンケートです。その意味では結果にバイアスがかかっている可能性が高く、この数字がそのまま社会全体を表しているとは思いません。
ただそれでも何かきっかけがあれば、手元供養はもう一段階延びる可能性があるとは感じられます。
手元供養が広がるとしたら、その要因は何か?
手元供養が広がるとしたら、それはどんな理由によるものか。まずは選ぶ動機を「積極的」「消極的」の2つに分けて並べてみます。
手元供養を選ぶ「積極的」な動機
まず最初に積極的な動機としては、「故人と離れがたい」というものがあります。
これは長年連れ添った配偶者との死別やお子さんを亡くされた方などで、相手と離れたくない、まだ一緒にいたい方が身近に感じられるようにと選択することが多いようです。
また手元供養を提供する企業を見ると、海洋散骨と組み合わせているところも多くあります。
散骨の欠点はお墓と異なり、お参りする対象が分かりにくくなることです。「海のあの辺に撒いたな~」と思って手を合わせることはできますが、明確なシンボルがないと心は入りにくくなります。
一方で手元供養の欠点は、(大部分の商品は)お骨の一部しか入れられないことです。残ってしまったお骨をどうするのかという問題に直面するため、両者の欠点を補いあう意味では、散骨+手元供養は良い組み合わせです。
海洋散骨自体も全体の1%程度ですが、海に眠るイメージの良さと、それでもお参りするシンボルは残したいという想いから、手元供養を選ぶ方はいるでしょう。
手元供養を選ぶ「消極的」な動機
そして手元供養を選ぶ消極的な動機に目を向けると、これは経済面に根差します。お墓は高いので購入できないけど、代わりに安価な手元供養を選ぼうというものです。
また金銭的な理由以外でも、引っ越しの多い仕事や海外で生活されている方など、お墓の管理は難しいので手元供養で代替しようと思われることもあるでしょう。
世の中どんな商品でも同じですが、消極的な理由でも選択されるようになると、普及率は一気に上がります。スマホだって「あれば便利」から「ないと不便」に変わったとたんに、みんなが持つようになりました。
一部のこだわりの強い方(積極的動機を持つ方)は少数派です。しかしそうした方以外が求めるようになると、手元供養はもっと広がることになります。
手元供養が広がる上で気になる、関東と関西の差
こうした手元供養の事情について考えた時、気になってくるのは関東と関西の収骨習慣の違いです。
関西であれば部分収骨なので、小スペースのお位牌や仏壇型でも置きやすい一方、関東は全骨収骨なので手元供養だけで完結させることは難しく、(別にお墓を持ったり散骨したりが必要なので)経済的に余裕のない方の受け皿には成りにくくなります。
これは手元供養ではありませんが、仏壇購入時に重視することを調査したA4仏壇さんのアンケートが参考になります。
これによると仏壇を購入する場合、最も気にされている項目は「大きさ」で、全体の68.6%でした。A4仏壇さんはその名の通り、A4サイズのお仏壇を販売している会社なので、これまた結果にバイアスはかかっているでしょうが、現在の住宅事情を鑑みれば、概ね外れてはいないでしょう。
このように考えるとひとまず近い将来、手元供養は関東よりも関西で広がる素地があるのではとほーりーは予測しています。
ということで、、、
そんなわけで今回は、手元供養について調べたことと考察をまとめてみました。結論としては手元供養はもう少し伸びていくかな(主流に躍り出るとかそんな規模感ではありませんが)というのが、ほーりーの感触です。
ただまとめきれなかったので、最後に気になっている点を列挙すると、
○手元供養は引継ぎがものすごく大変そう
お骨は自宅で管理できていれば良いのですが、親が亡くなった後に子どもが引き取ると、改めて自分の家へ持ち込まなければいけません。もし子から孫へと引き継いでいくと、際限なく家の中にお墓が増えていく(か、改めてお墓を建てざるを得ない)という問題が出てきます。
万が一、そのまま捨てられたり、その辺に埋めたりしてしまうと、最悪の場合は罪に問われる可能性もありますし、お骨の管理は意外と繊細です。
○ジュエリーのような形の場合、お骨だと思わずに扱われる可能性が高い
最初に紹介したお骨をダイヤモンドにした場合など、これは知らなければ故人の骨とは気が付けない可能性も低くないでしょう。あまり詳しくないですが、普通の貴金属だと思って売ってしまった場合は、どうなってしまうんでしょうか。
実際に日経新聞の過去記事では、合成ダイヤが天然ダイヤ市場に紛れ込んでいる懸念を伝えています。
この辺はエンディング産業展で業者の方にお聞きしても、腹落ちする回答が得られなかったので、詳しい方がいたら教えてほしい部分です。
と、いうものがあります。
まあ、ほーりーは今のところ手元供養は肯定派でも反対派でもありませんが、お寺の樹木葬を勧めている立場としてはやはり気になる業界です。なのでこうして調べたり、facebookグループでお坊さん方と意見交換しています。
選択肢が増えるのは良いことですし、いろんな商品が増えていて、見ているだけでも楽しくなるところはありますしね。そんなわけで引き続き、手元供養もウォッチしていきます。