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テレビに「布教」までさせようと思うこと自体、間違ってます

テレビのロケ

先日書いたぶっちゃけ寺終了に言及した記事が、あちこちで話題になったようです。

ぶっちゃけ寺を見なかったと誇るお坊さんの、絶望的センスのなさ

賛否両論、様々な意見がありました。ついでになぜか、「絶望的センスのなさ」という口の悪い言葉が、お坊さん達の間でプチ流行してしまったようです。

「お前(=ほーりー)こそ、センスないだろうが」みたいな言葉が返ってくるのは想定していたのですが。なんか、私の勘違いだと思うのですが、みんな楽しんで使ってる? いろんなパロディや大喜利みたいなものまで作られてて、最初に使った私がドンびくレベルです。

私と(そして上記記事とも)全く関係のない人やものを指して、「こんな絶望的にセンスないもの見つけた」みたいな使われ方も見かけ、申し訳なさに身もだえしてしまいます。

そうかー。こういう、ほーりーの潰し方があるのか。負けたよ。すげぇ、センスだ。あんまり悪い言葉は使うものじゃないなと思いました。

まあ、それは余談として。

ぶっちゃけ寺がヒットしたのは、お寺社会と世間のギャップ

頂いたご意見はたくさんあったのですが、多かったものに「ぶっちゃけ寺は同業者(お坊さん)から見れば、ありきたりなことばかりで面白くなかった」というものがあります。もっとぶっちゃけてくれれば見たのにということですね。

私が前回書いたのは、ぶっちゃけ寺を一回も見ようとしなくて、さらにそれを自慢して吹聴する行為についてです。なのでこの時点で、ちょっと話がそれています。が、それはそれとして、お坊さんがあれを見て面白くなかったというのは重要な気づきです。

これはぶっちゃけ寺が誰を対象としていて、どんな人に向けて作られているかを考えれば一目瞭然です。お坊さんがあれを情報番組として見るのなら、明らかに低レベルなはずです。むしろ、うんうん。知らないことばかりだとうなづいていたら、やばいかもしれません(そのときそのときのテーマとの、馴染みのあるなしもあるでしょうが)。

が、この社会で暮らしている多数の人にとっては、あんな情報でもものすごく新鮮に映るんですね。私も人生で初めて宿坊に泊まったり、お寺の朝のお勤めに出たときは、世界がひっくり返るほどの衝撃を受けました。それがきっかけで宿坊研究家として18年間も活動を続け、脱サラしたり会社も作ってしまったほどです。

株式会社寺社旅を設立。ほーりーが社長になっちゃった

お寺にいる人にとってごくごく普通のありきたりな(退屈とさえ映る)日常が、外の人間にはキラキラと輝いて見える。お坊さんが笑うとか、話すとか、泣くとか、スマホをいじるとか、そんなことでさえ価値観がひっくり返る人もいる。そうしたギャップがぶっちゃけ寺のヒットを支えた大きな要因です。

その意味でテレビ局の人たちは、やはりプロなわけですよ。

テレビ局が「布教」まで担うなんて、無理です

そしてもう一つ多かったのは、本当に言いたいことや伝えたいことを言ったら、全部カットされたというものです。これを持って、あんな番組はひどいというのも私は違う気がしています。

今回はあえて言ってしまいますが、私はとあるバラエティ番組(ぶっちゃけ寺とは全く関係ないですよ)に出演した時、とある芸人さんがクイズに答える場面に立ち会いました。そしてその芸人さんが見事に正解した途端、ディレクターさんから「すみませーん。ここは不正解になる場面なので、撮り直します」というえげつない声がかかりました。

しかもその芸人さん。罰ゲームまで受けさせられてました。それでも嫌な顔一つしなかったところに、プロのすごみを感じたものです。

このようにバラエティ番組は、虚構の上に成り立つ部分があります(すべてがそうだということではないです)。そんなテレビ局に、布教を期待するなんて間違っています。それはテレビと言うフィールドの中にいる限り、出演者がお坊さんであっても同じです。

テレビはまず、視聴率の取れる番組として成立させなければいけません。お坊さんが檀家さんからお布施を預かっているように、テレビ局だってスポンサーからお金を頂いて、その期待に応えられるものを作ろうと努力しています。

テレビで俺の言いたいことを取り上げろと言うのなら、スポンサーになってお金を払わないと無理なんですよ。番組が仏教の真髄より楽しさを優先するのは、構造上しかたのないことです。

他人を貶めるような事実の捻じ曲げや悪意ある切り取りは別ですが。政治家の報道とかでよく話題になる感じの。上のクイズの例でも(是非はあるでしょうが)芸人さんがいかに面白くなるかには気を配られていましたし、私に対しては寺社の専門家としての立場を落とさないよう、ものすごく気を使って下さっていました。

なので私はぶっちゃけ寺の収録場面は知りませんが、そんなテレビと言う価値観のぶつかり合うはざまで2年以上も身体を張ったお坊さん達には、全力で拍手を送りたいわけです。そして同じくらいにお坊さん達と折り合いを付けながら番組を成立させたテレビ局の方も、真剣にすごいと思っています。

楽しさ優先のテレビ局に期待できること

それじゃあ、テレビ局に期待することは何か。それは、お寺やお坊さんに好意を持ってもらう世間の環境作りです。楽しい番組を作ってもらえれば、それがそのままお寺社会へのポジティブな目になっていくので、これはテレビ局とお坊さん達との利害も一致します。

私がお坊さんの講習会で講師をする時、よく出す例えのひとつに『キャプテン翼』があります。Jリーグが始まる前、日本でサッカーと言えばマイナー競技の扱いでした。ですがその時代のサッカーに魅力がなかったかと言えばそんなことはありません。

メキシコ五輪でアジア人初の得点王となり、銅メダルを獲得した釜本邦茂さんや、日本人初のプロサッカー選手(二番目説もあります)としてドイツで「東洋のコンピューター」と呼ばれた奥寺康彦さんもいます。

が、日本中の子供たちにサッカーボールを蹴らせたのは、そんなスター選手ではなくキャプテン翼という漫画でした。でも、それを見てサッカーを始めた人(ほーりーもその一人)が、試合でタイガータックルをするかと言えば、そんなことは絶対ないわけです。そして相手を吹き飛ばすタックルは反則だからと日向くん(主人公のライバル)がおとなしいタックルしかしなかったなら、ほーりーはきっとサッカー部には入らなかったでしょう。

テレビは関心を持ってもらうまでで、仏教を伝えるのは実際にお寺に足を運んでもらってからでも遅くはありません。むしろ楽しさを感じてもらう前に最初から「お坊さんの伝えたいこと」にこだわり過ぎると、人が逃げていきます。

欲張り過ぎ、禁止。

ぶっちゃけ寺を見た人が、お寺に来るとは限らない?

そして次に来る意見は、「ぶっちゃけ寺を見たけどお寺に来ない人は、お寺について誤解したままになるじゃないか」というものです。

私の想像ではぶっちゃけ寺を見た中で、笑って終わる人は9割以上です。が、そうした人がぶっちゃけ寺がなければお寺に来たかと言えば、それはほぼないと思います。

だってテレビの前にいる人は、お寺の本堂でお行儀よく座って真剣な目でお坊さんの話に耳を向けている人とは違うわけですよ。カレー食べてたり、お風呂上がりでビール飲んでたり、チャンネルあれこれ変えながら見ているのです。

キャプテン翼を読んだけどサッカーをしなかった人の中には、オーバーヘッドキックは普通のシュートより遥かに威力の強いボールが蹴れると誤解したままの人がいました。

ぶっちゃけ寺を見たけどお寺に来なかった人も、いろいろと誤解が生じる部分はあるでしょう(それ以前に9割9分は、お坊さんが出てた以上の内容は忘れると思いますが)。ですがそれは将来的にお寺とご縁ができた時に、改めて解いていけばいいわけです。そしてご縁ができなかったのなら、それはそれでやむなしと割り切るべきです。

むしろ一割未満(それでもとんでもない人数です)かもしれませんが、お寺に積極的に興味を持つようになった人に、まずは改めて「お寺で」仏教を伝えていけば良いのではないでしょうか。その一割未満の人が口コミで伝えてくれれば、お寺に来なかった人とのご縁も生まれやすくなります。

お坊さんの不祥事とか、お布施の額でもめたとか、そんなセンセーショナルなニュースの方が、面白おかしく取り上げられやすい時代です。あれだけ好意的にお坊さんを取り上げてくれたぶっちゃけ寺さえ、「あんなものはけしからん」となってしまうようだと、どんどんと殺伐としたニュースでしかお寺は扱われなくなるとほーりーは危惧しています。

ということで、、、

お寺の漫画図書館なんてものもプロデュースしたマンガ好きなほーりーですが、今回は特に後半、キャプテン翼とリンクさせつつ、ぶっちゃけ寺について振り返ってみました。

私は世代的にキャプテン翼が一番語りやすいのですが、下の世代だとイナズマイレブンの方がピンと来るのでしょうか(ちょい、若すぎる?)。上の世代の方なら巨人の星とか、キャプテン翼はわからーんという方は、しっくりくるもので読み替えて頂けたら助かります。

結局、テレビにはテレビの得手不得手があり、やってもらうことはお寺の役割を肩代わりさせることではないわけです。テレビの強みに上手く乗っかれるようになれば、お寺の強みも発揮しやすくなりますよ。

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